地盤を崩すために仕掛けられていた地雷により通路が崩れ、運悪くその亀裂にハクトの仲間モンスターのばくだんいわが飲まれてしまったのだ。
すかさず後を追い亀裂に飛び込んだが、ばくだんいわが溶岩に落着するまで数十秒とない。
飛び込んだ位置を一瞥し、左足を曲げて…
いや待て。
今俺は、アンカーボルトを使おうとしている?
相手はばくだんいわだ。
そんな事をしたら…
「コード4.5、アンカーボルト射出!」
しかして足に装着されたポケットから二本のアンカーが裂け目の外とばくだんいわに向け放たれてしまう。
スローモーションに映る視界の中、重力加速度も加わって勢い付くアンカーは真っ直ぐにばくだんいわに突き立って…
メ・ガ・ン・テ
「ですよねッ!!?」
フツキの一風変わった悲鳴とともに、眩い閃光に包まれるボロヌス溶岩流。
許容範囲を超えた光量に焼け付いた瞳がハッキリすると同時。
『…聞いてる?フツキ君』
「おわっ…!?」
フツキは久々のオフを過ごす自室で、いきなり耳に飛び込んだ通信に驚きの声を上げた。
『今ちょっといいかしら?』
「ティードさん。どうかしましたか?」
声に聞き覚えがある。
通信の相手はハクトの母のティードのようだ。
『実はハクトの事何だけ…』
「嫌です」
ハクト君は良い子だ。
相手が………ならいざ知らず、他ならぬ彼の為なら、何でも引き受けよう。
『………ドルボードレースの運営から直接苦情が来て………』
「嫌です」
ハクト君が?
苦情を出されるような事を?
いやいや、ないない。
有り得ない。
………じゃあるまいし。
ん?
………って誰だ?
『手当たり次第爆弾を使って一方的にレースをしてるらしくて』
「………」
『そろそろ法的な措置を何て言われたから対処しないと…』
まるで録音のように規則的に続く会話を放棄する。
「…いや、やっぱりどう考えてもハクト君がそんな迷惑をかける訳が無い」
そうだ。
ラッカラン行きの特別列車でも勝手に人の大事なコーヒー豆をドブ水に錬成したり、ディオーレ女王陛下の生誕記念祭ではおかげで特別なコーヒーをあやうく飲みそこねるところだったし、挙げ句、逮捕歴まで付けられて。
今回も、たまには素直に頼れば良いものを、煙に巻いてばっかりで。
それも全て…。
「許さんぞ!!マーーージーーーーーーン!!!」
それはまるで射し込む陽光に霧が晴れるように、怒りで悪夢の結界を打ち破るフツキであった。
続く