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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2022-05-20 10:23:42.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作「逃亡者マージン」その59

「…はっ!?」
そんな幼き日の感傷に浸る間もなく、また時間が飛んだ。
「ここは…」
ここへ来てようやく、己の身体がすっかり見慣れた姿になっている。
いや、少し若いか?
しかし今度は、身体の自由も効くようだ。
それが何よりもありがたい。

そしてここは…。
あの日の、あの場所。

「…?おい、何処へ行くんだマージン!?」
たとえ現実ではないとはいえ、悪いとは思いつつもサンドストームの仲間の声を無視して走り出す。

ボスが、キャトルが、この時、この場に居たはずだ。居たとするならば、必ず戦況を見渡せる場所。
現在のマージンの経験値を全て注ぎ込んで、キャトルが居るであろう場所を推測する。

過去とも夢とも幻覚ともつかないこの世界で、果たしてキャトルに会ってどうしようというのか?
俺はもっと、ドライな性格だったんじゃないのか?
ヴェリナードでフィズルのおっさんに、あれだけ啖呵切ったのに?

ぐるぐると頭の中に様々な逡巡が巻き起こるのと裏腹に、足は止まらない。
むしろどんどん加速して、気付けばこの場所に辿り着いていた。

「…どうした?何故ここにいる?」
ボロボロのマントを羽織った後ろ姿。
「…」
男の背中を見て、涙が出そうになるなんてのは、生まれて初めてだ。

今この瞬間、こんなにも、確かに胸は痛いのに。

あの日。

こんな事は、起きなかった。
起きなかったんだ。

俺はもう、失った。

だから、今ここで、やるべきことは………

「どうした?マージン。悪いが、もうすぐ客が来る。早く離れろ」
「…」
マージンの開きかけた口が、言葉を紡げずまた閉じる。
「聞こえなかったのか?…早く、ここから、逃げるんだ」
キャトルは諭すように繰り返す。

『あんたこそ、逃げてくれ』

涙が頬をつたう。
天を仰いで、本当に伝えたい想いを無理やり飲み下す。

そしてマージンは、ようやく言葉を絞り出した。

「教えてくれ、ボス。竜を倒すには、どうすればいい?」
マージンの言葉に振り返ったキャトルは、驚いた表情を浮かべていたが、何かを悟ったように語りだす。

「絵ヲ、台無し二す、るんだ」
正確な記憶の再現ではないからだろう。
急にキャトルの言葉は声色から何から、継ぎ接いだように不安定になる。
「いや、もっと具体的に…」
そして意味不明という所が一番の問題だ。

「ナイフは重ヨウじゃ、ナい」
「ますますわからん!?」
キャトルの二の句に、マージンはより混迷の闇に落ちる。

「塗リ替えテ、別の物にしテしまえばいインだ。ジュエの血だけが、それを為す」
「いや、もう母さんは…」
「そこに居る。母さんも、俺も、そこに」
まっすぐ、キャトルがマージンの胸を指差す。
つられて自らの胸元を見下ろしていると、ぽんぽんと軽く頭を叩くように撫でられた。

「…ようやく、間違えなかったな。それでいい。それで、いいんだ」
キャトルのその言葉に、マージンは思い出す。

ずっとずっと、もう何度も何度も繰り返し、同じ悪夢を見させられていたのだ。
この地に辿り着き、キャトルに逃げてくれと伝えて、しかし、現れたダムドに二人まとめて葬られ、また母の胎内に戻る。
そんな、捻れて狂って繋がった終わりのない夢を。

「さぁ、行け」
再び始まりに夢を捻じ戻すべく、マージンの方へ近付いてくる不気味な足音の前に、キャトルが立ち塞がる。
トン、と背中を押されたと思った瞬間、マージンの体は猛スピードで空へと舞い上がっていく。

それはどこか、バシルーラの感覚にも似て。
空中でがむしゃらに伸ばした手は、やはりキャトルには届かない。

遠ざかる背中へ咄嗟に呼びかけようとして…ふと気付く。

何と呼べばいい?

過去、何度となく言葉を交わしたはずのキャトルを呼ぶ言葉が、今のマージンには浮かばないのだった。
                      続く
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