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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2022-05-25 19:50:19.0 2022-05-25 19:50:42.0テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作「逃亡者マージン」その68(完)

「…あの、マーちゃん?」
ティードの美しさに来客たちも息を呑み、静まり返った店内。
そんなことはつゆ知らず、ティードは周りには聞こえないよう、様子のおかしい夫に小声で声をかける。

「………」
しかしやはりマージンからの返答はない。
それどころか、まるで石化の呪いがかけられたかのように、微動だにしない。
その硬直っぷりたるや、呼吸すら止まっているのではなかろうかという程だ。

「やっぱりその…似合わない…かな?」
ティードはあらためて自らの全身を見回す。
ステレオタイプなイメージしか沸かず、しかしまあ花嫁のドレスといえば多分そういう物だろうと、メギストリスの衣装屋にてセ~クスィ~と連立って見繕ったドレスは、胸元にこそレースの飾りがあしらわれているものの、大量生産品のいたってシンプルな、プリンセスラインの純白の拵えである。

客席に見えるテルルやセ~クスィ~やライティア、セイロンやマユミらのドレス姿の方がよっぽど綺麗に見えて、ティードはすっかり萎縮してしまっていた。
そこにつけて夫マージンの沈黙である。
ティードの不安は最高潮に達していた。

「こほん、え~っと…」
微妙な空気に埒をあけようと、目つきの悪いプクリポの神父が、咳払いを一つ、そしてお決まりの文句を続けようとした瞬間。

「!!!???」
がしっとティードの肩を掴んだマージンは、間髪入れず、くちづけした。
それは、神父の宣誓の言葉があって、何かしら一言二言かわして、その後の筈である。

目を白黒させ、どういう段取りであったかをグルグルと頭の中で思い出しながら、次の瞬間ティードの頭を埋め尽くしたのは、恥ずかしい、という感情だけだった。

「なっ、なっ、何するだぁぁぁ!!!?」
どっと湧き上がる招待客達の囃し立てる歓声と、ティードの噛み噛みの罵声、そしてそれらを大きく上回るビンタの轟音が響き渡る。

「…まったく、段取も何もあったもんじゃねぇな。まあ、それが一番お前らしいか、マージン」
本職を連れてくるツテが無く、訳も分からず連行されて神父服に着替えさせられていたフィズルが、呆れつつもにやけた顔で文句を垂れた。

パペットマンを上回る角度で首がひん曲がったマージンを、ドレスの裾を捲し上げ、真っ赤な顔で追い回すティード。
セイロンとテルルは無責任にも演奏楽曲をジプシーダンスに変更して盛り上げる。

必死に逃亡するマージンはというと、首の角度を何とか元通りに直そうとしながらも、逃げる道すがら次々と友人たちを盾がわりにあてがいつつ会場を駆け巡るものだから、狭い虎酒家の店内は、すっかり大混乱である。

フィズルは喧騒を背に、虎酒家の外へ出て空を見上げた。
「やれやれ…」
一息ついて、窓からそっと覗きこんだ店内では、最後の砦であったセ~クスィ~が、ブーケと引き換えにあっさりマージンをティードへ引き渡したところだった。

どうしても公務でヴェリナードを抜けることができなかった為、『ヴェリナードまで投げてください!』とアスカとユナティがドラキーメールによる祝電で望み、マユミ以下参列の女性陣が我こそはと狙い澄ましていたブーケの行方は、何ともしょうもない受け渡しとなってしまったようだ。

「…キャトルの旦那。そっちから見えてるか?あんたのせがれは、まあまあぼちぼち、楽しくやってるよ」フィズルは店内の様子に苦笑を浮かべ、そっと言葉を空へと投げる。

「おっさん!助けて!!」
そこへ半ばタックルするかの如く、同じく店外へと飛び出したマージンがフィズルの背を掴んだ。
「せっかく人が感傷に耽ってんのに!ぶち壊しだなおい!!…って、いい加減落ち着けティード!うおっ、よせっ、俺は手投げ斧じゃねぇって、ちょ…あ~っ!!」
喧騒はどこまでも、蒼天の空へと舞い上がっていく。
そして、その喧騒の届く果ての果て。
マージンのマイタウンの一画に建てられた、小さな小さな石造りの墓の上で、被せられたボロボロのテンガロンハットがほほ笑むように静かに風に揺れているのであった。
           ~Fin~
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