「ふむ?するとなにか、君らはSB-28を見てすらいないと?では何故動き出した…?」
「最初からそう言ってるでやんす!そのコスプレ野郎のことなんか知らないでやんすよ!!」
「ふむふむほうほうほう!!」
プクリポは二人の小悪党のことなどもはや眼中にないとばかりに、場に不釣り合いの晴れやかな笑顔を浮かべ小躍りを始める。
「そうかケラウノス!ケラウノスか!!あの老人、てっきり余剰コアは着服するものと思っていたが、何気に義理がたい男だったのだな!完成させたのか!うむうむ、外装は何やらトンチキだが文句は言うまい。あの槍がケラウノスなら…いいぞ、運の巡りは最高だ!やはりこの私、ケルビンこそ天に選ばれし唯一の天才ということだ!!」
狭い室内とはいえ、笑い声を響かせながら既に4周はぐるりと踊り回るケルビン。
その間も、兄貴分はくすぐられ続け、徐々にその悲鳴も喉に念入りにやすりをかけたようにすっかり掠れ、隙間風のように変貌している。
「全部話したでやんすよ!早く兄貴の装置を止めるでやんす!!」
「ああそうだった、ほれ」
ケルビンは引き続き踊りを止めず、さらに回転を加えながら、すれ違いざまにボタンを押し込む。
「えっ?ちょっ、あああ~あはばばばば…!」
しかし装置は止まるどころか、弟分の方のベッドからもアームが飛び出し拷問を始める。
「何で!?何でぇぇぇッ!!?」
「その装置をわざわざ作るのに、いくら注ぎ込んだと思っている?投資額は必ず回収するのが私のモットーなんだ。そもそも、全て白状したら解放してやると、一度でも私が言ったかね?」
ケルビンは触れてしまいそうなほど至近距離まで顔を寄せながら、弟分に囁いた。
表情は高笑いを浮かべたまま、しかしその瞳は枯れた井戸を覗き込んだかのように虚無をたたえていることをようやく知り、弟分は悲鳴を上げるのも忘れて凍りつく。
「…さて、ケラウノスを出迎える準備をせねばな。私の衣装はどのようなものが良いか」
もはや小悪党に興味が無くなり、装置はそのままに部屋を去るケルビン。
その懐から取り出したガラス瓶の中には、金色の頚椎が一つ、薬液に浸され浮かんでいるのだった。
続く