「くっ…これはなかなか…」
各種性能とともに、耐性も大幅に向上を果たしたハクギンブレイブだったが、さすがに暴走する機関部が作り出す灼熱の空間に苦戦する。
「もって5分。それ以上は如何にハクギンブレイブといえども保証できない。急がれたし」
ケラウノスもまたヒャド系統の冷却機構をフルに展開するが、まさしく焼け石に水。
その効果は、ごくわずかにハクギンブレイブの温度上昇を抑える程度にとどまる。
溶けて足にまとわりつく床材を引き剥がしつつ、何とか辿り着いた機関部の中枢では、巨大なガラスの球体の中に燃え盛る火の玉が鎮座していた。
指示に従い、太陽の如き火球にケラウノスを突き入れ、然る後に引き抜くと、まるで吹きガラスの作製中のように赤熱化した獅子の口には金色の骨が咥えられている。
「目的は果たした。直ちに離脱を」
(何か咥えててもちゃんと喋れるんだ…)
熱に浮かされてか、まったくくだらない事を考えるハクギンブレイブをよそに、ケラウノスは嫌な予感にとらわれる。
ゴルドスパインを引き抜いたにも関わらず、機関部コアの火球は消失するどころかより煌々と輝きを増している。
しかし今は兎にも角にもフタバの復旧である。
再び重い足取りで来た道を引き返すハクギンブレイブの背に負われ、亀裂など入らぬようゴルドスパインをゆっくりと冷やすケラウノスであった。
一方で、祈るような気持ちでハクギンブレイブの帰還を一人待つハクト。
「…!!」
その眼前で、連結箇所からごく近い位置で火柱が上がる。
劇場車両のエネルギー系統が爆発を起こしたのだ。
激しい炎の厚い壁に埋め尽くされる視界。
その向こうに見えるハクギンブレイブの影は、膝をついてしまったように見えた。
「ボンバーチャージ!」
先程までの震えはもう微塵もない。
片手剣の柄頭を押し込むと、柄の中に仕込まれた筒型ギガボンバーが炸裂、その爆発は余すところなくエネルギーへと変換されて刀身が閃光を放ち、ハクトは自作の強化スーツを身にまとい、ブレイブジュニアへ転身するのだった。
ハクトが目にした通り、唐突に湧き上がった炎につつまれ、ハクギンブレイブは膝をつく。
しかし約束したのだ。
必ず戻ると。
距離に反して遥かに遠い出口へ伸ばした腕が、ガッシリと掴まれ、強く引かれる。
炎を突き破るように現れた鈍い橙色のヘルムに赤いバイザー。
「ハクギンブレイブ、しっかり掴まって!!あと少しだよ!!!」
「ハクトくん…!?」
ハクギンブレイブが見知らぬヘルメットから飛び出した声に驚いている間に、二人はからくも煉獄のような空間から抜け出すのであった。
「「っぷはあ!暑かった!!」」
倒れ込むなりヘルメットを外すと、お互いに滝のような汗にまみれた顔が姿をあらわす。
「…ふふ」
「はは」
笑いがこぼれたのはどちらからか。
「ありがとう、ハクトくん」
「気にしない気にしない。友達、でしょ」
軽く拳を持ち上げれば、勝手知ったるとばかりに、拳が打ち合わされる。
「よし!休憩終了!!まだ、やることがある。そうでしょ?」
「はい!フタバのところへ早くコアを届けないと。セ~クスィ~さんの事も気になります。急ぎましょう!」
再びメットを装着し、二人の新人ヒーローは力強く駆け出すのであった。
続く