※Ver.4のネタバレを含みます、ご注意ください※
「姐御、クソ親父の置土産は俺が何とかする。この…何だっけ?」
「大地の箱舟」
「そうそれ!そっちは任せた!!」
背中のケラウノスにフォローされつつ、フタバは竜機械に向け猛然と駆け出す。
「アカックブレイブ。聞いての通りだ。フタバとハクギンブレイブ、そして私。戦力としては申し分ない。加えて、知り得る限りのゴルドスパインの情報はそちらの本部端末に送信済みだ」
フタバの手により五月雨に振るわれながらも、ケラウノスはアカックブレイブに進言した。
正確無比かつ神速の4連撃を、竜機械は事も無げにぬるりと回避する。
しかしフタバの狙い通り、とりあえずのターゲットを絞った様子で竜機械はまっすぐフタバと向き合った。
『…確認したわ。ありがとう』
アカックブレイブのベルトを通して、おきょうからデータ受領の確認が入った。
ケラウノスの頭脳は欲しかった所だが、こちらにはおきょうがいるのだ。
それに、もう一人。
「ブレイブジュニア、独学でスーツを作り上げた君の発想力はきっと役に立つ。あてにしているぞ」
「はい!!」
『アカックブレイブ、まずは近付ける限りでいい、機関部の様子をスーツのカメラで…』
「…あの~」
アカックブレイブの考える頭数に入っているのか疑問を抱えたまま、ミサークも一応と声を上げる。
「君は先程の、丈の合わないスーツの青年か」
「…覚え方が残念!あ、いや、そこはどうでも良くて。俺にも何か、役に立てること無いっすかね?」
ミサークは、黙っていれば良いものを、敵とはいえ槍玉に挙げられてしまえば自分も何かしなくてはと、わざわざアカックブレイブに声をかけてしまう自分を内心悔いている。
「そうだな…。引き続き、乗客の皆の対応を頼む」
アカックブレイブにとってのミサークは、床にのびている姿しか見ていない以上、未知数である。
だが、今この状況に至ってなお、乗客達がパニックに陥っていないという奇跡は、居合わせた劇団の面々もさることながら、きっと彼と、その隣で今も子供達をなだめているプクリポの少年の頑張りによるところだろうと想像がついた。
それもまた、もちろん生半可に出来ることではない。
「了解っす!…ただ、あの」
「どうした?」
正直、時間の猶予は無い。
こうしている間も、背後からはフタバ達と竜機械の激しい戦闘音が響いているのだ。
だが、アカックブレイブの直感が、彼の話を聞くべきだと囁いた。
「掻い摘んで聞いてただけなんすけど。ずっと気になってたんすよ。この箱舟の動力源」
「…ふむ?」
「画期的な新エネルギー。高効率な伝導で従来機を覆す性能。てっきり、スパインシステムの名の通り、その、何でしたっけ、ゴルドスパイン?」
「そうだな」
「ええ、それ、それが何かこう、太陽の石みたいにエネルギーを生み出してんのかなって思ったんすけど、違うらしいし」
ミサークはちらちらと乗務員の方を気にしつつ、意を決して推論を続けた。
「…コイツ、地脈エネルギーで走ってるんじゃないです?」
「地脈エネルギー…?」
ハクトは聞き慣れない言葉に首を傾げる。
『最近、考古学の分野でウルタ皇女の研究が進んで、その存在が明るみに出た資源ね。…でも、だとすると』
「そう、だとすれば合点がいくんすよ。太陽の石に代わるような大発明だったら、詳細を公表した方が権利も守れて、理に適ってる。それでも秘匿するのは何故か。地脈エネルギーを使ってるってんだったら、そりゃ、隠したくもなりますよね?」
改めて乗務員に目線を送れば、青い顔で顔を背ける。
「…俺はただの落伍者で、烏滸がましくて言えねぇ立場だけど。地脈エネルギーを知ってるってことは、あの論文を読んだってことっすよね?」
返事はない。
しかし、相手が無言であることがこの場においては何よりも雄弁であった。
ミサークは自分の柄にもないと思いながらも、諭すように続けた。
「…考古学ってのは、先人の想いを汲み取る学問なんすよ」
続く