※Ver.4のネタバレを含みます、ご注意ください※
それは、ミサークにとっても忘れたい黒歴史。
その昔、王立調査団見習いを経て、魔法戦士団の試験に不合格となったミサークは、すっかり目標を見失い、やさぐれていた。
そんな中、気晴らしに立ち寄った興行テントの中で見た、一つの演目。
それは、小型カラクリ兵による素晴らしい演舞であった。
魔力でもなく、ドルセリンでもなく、古代より培われた太陽の石によるエネルギーで動く彼らの舞踊が、ミサークの心に再び好奇心の輝きを灯してくれた。
そうしてひたすら神カラクリを調べるうち、ミサークは古代ドワチャッカ史に食指を伸ばすに至る。
あくまで本職ではなく趣味とはいえ、レタシックスーツの開発や、チームメイト、ウィンクルムのゴーレムを修繕するなど、専門家も顔負けの知識と技術は、日々欠かさず文献や最新の研究発表に目を通し、吸収してきたからにほかならない。
当然その中には、地脈エネルギーが明るみに出るに至った学説、おきょうの発言にあった『ウルタ皇女に関する最新の研究発表』も含まれる。
そしてそこには、無視してはいけない大事な事が書かれていたのだ。
「ドワチャッカ大陸の砂漠化が地脈エネルギーの枯渇が原因かもしれないってのは、勿論知ってますよね?地脈エネルギーの総量は大陸によって異なり、中でもドワチャッカ大陸のそれは他に比べて極めて低い。砂漠化したからそうなったのかもしれないけど、砂漠化が起こった時期、ウルタ皇女の行った政策を考えると、それが一番辻褄が合うんスよ」
一日車掌、今日という日を一番楽しみにし、そしてこの大地の箱舟に一番愛着を抱いているであろう友人を気遣いながらも、ミサークは最後の句を継いだ。
「確かに、地脈エネルギーの使用を禁じる法律はまだ無いっスけど。でも、俺たちに今のアストルティアを残してくれた先人達のためにも、未来のアストルティアを生きる人々のためにも、この箱舟は一刻も早く止めなきゃいけねェんだ」
ミサークの演説に、感動や後悔など皆それぞれに理由は異なれど、黙して聞き入っていた為、語り終えるとともに車内は重苦しい沈黙に包まれる。
それに真っ先に耐えられなくなったのは他ならぬミサークであった。
「………いやぁ~はは、何てカッコつけたトコで、俺には止め方なんて分かんねぇんスけど」
ミサークはすっかり赤面してポリポリと頬をかく。
『いえ、素晴らしいわ、ええと…』
「ミサークっス」
『ミサークさん。おかげで打開策が浮かびそうよ』
かくして、黄緑の戦士の閃きのもと、面々は動き始めるのであった。
続く