「ケラウノス、自己修復は?」
黒く焼け焦げた両腕が、だらりと垂れる。
握りこぶしを作ったつもりが、僅かに中指と人差し指が動くだけに終わった。
「…間に合わない」
フタバは相棒からの予想通りの返答を冷静に受け止めた。
こうなれば、取るべき手段などたった一つに決まっている。
「今度こそ…さよならだな、姐御。それと兄上…俺は…いや…何でもない」
未だ箱舟の屋根上で、姿の見えない姐御を想う。
そして兄への秘めた思いは、このまま仕舞っておくことにした。
優しい兄のことだ、きっと伝えれば、ずっと引きずってくれるだろう。
それはそれで幸せなことであるが、本意ではない。
自分でも驚くほどに呆気なく、フタバの心は定まっていた。
風圧に弄ばれるままに腕を投げ出し、竜機械へと駆ける。
「駄目だ!フタバっ!!」
超展開すれば届く距離。
しかしベルトのドルセリン管はすでに使い切っていた。
「お姉さん!?待ってっ!!」
ハクトもまた、フタバが気兼ね無くエネルギーを撃ち放てるよう距離をとっていたことが災いする。
後を追い駆け出したハクギンブレイブにブレイブジュニアだが、到底フタバのもとには届かない。
ハクギンがシドーレオのなれの果てと共にラギ雪原の奈落へ消えたときと、全く同じ光景が繰り返される。二人の制止も虚しく、竜機械にタックルをしかけたフタバは、車両の壁に空いた大穴を通り海中へ消えていく。
すぐに後を追い飛び込もうにも、その果てにフタバを救う術がない。
力が欲しい。
大事な妹を、助けるための力が。
無力感に苛まれ、強く願った刹那、ハクギンブレイブのバイザー内に、無機質な文字列が表示される。
『command accept… MODE : Leonard start up』
文面の意味も分からず困惑する最中、ハクギンブレイブの身体に変化が訪れる。
「えっ!?ベルトが…取れた~~~ッ!?」
ハクギンブレイブの全身を眩く包み込む閃光。
その中から、何とも情けない声音で、ハクギンブレイブの絶叫が響き渡るのだった。
続く