アズラン住宅村の一画。
プクリポの少年、ごましおの元気な声が響き渡る。
「チケットの確認はこちらで~す!!!」
「こちらが入場待ち列、最後尾!時間はまだ全然大丈夫っス、慌てずゆっくり並んで下さ~い」
「ごましおくん、さっきのお客さんのチケット、鋏入れた?」
「あっ…!そこのお客様~、お待ちになって~っ!!」
いつぞやの一日車掌スタイルで、ハクトやミサークに手伝ってもらいながら慌しく来場者の受付をこなしていく。
その向こう、受付を済ませた来客達が続々と入場していくは、この度、はれて初日公演を迎えた新劇場だ。
「さすが大棟梁、見事な出来だ」
受付の様子を微笑ましく見守りながら、建物の出来栄えにセ~クスィ~は感嘆の呟きを漏らす。
劇場の両サイドに連なり、庭には大地の箱舟の各車両が再現されており、さながら、残念ながら廃車となった劇場列車が蘇ったかのようである。
それもそのはず。
「例の大地の箱舟の廃材、まるっと使わせてもらったからな!まさしくこいつは、生まれ変わりさ」
劇場の建築にあたった魔法建築工房『OZ』の大棟梁ロマンもまた、来賓としてタキシードに身を包み、誇らしげに劇場をみやる。
事件の後、スパインシステムは環境に悪影響を与える可能性、また、システムに欠かせないゴルドスパインの喪失により、残念ながら封印されることとなった。特有の低振動性は従来の大地の箱舟の機関システムでは再現が不可能な為、劇場列車の構想もまた残念ながらお蔵入りとなってしまったが、僅か一ヶ月というスピード工事の果て、今こうして形を変えて、皆に笑顔を届ける場として再スタートをきったのだ。
それは、悪しき目的のもと生み出されるも、最後は自らの輝かしい意志でアストルティアの一員として生きることを選んだ、ハクギンブレイブやフタバ、ケラウノスにも似て。
「あ!姐御~っ!!」
噂をすれば何とやら。
背にケラウノスを背負い、メットを首の後ろに引っさげたフタバが、満面の笑みを浮かべ、手を振りながら走ってくる。
こけら落し公演の演目はもちろん、大人気のドルブレイブショー。
劇を観て弾む心さながらの口当たりの良いポップコーンに、歓声に乾く喉を潤すドリンクも忘れずに用意して、ふかふかのシートに座ったら、開演のベルを待とう。
劇場の幕が、間もなく上がる。
~Fin~