アレスとヒッサァ、馬に跨り去りゆく二人の後ろ姿を、およそひっそりないしはこっそりという言葉が似合わない男がサボテンの影から見つめていた。
サボテンから遥かにはみ出す恵まれ過ぎた筋肉。
細心の注意を払っていたアレスとヒッサァでさえ見落としてしまったのは、彼の服装が覆面にマント、手袋にブーツ、なけなしのブーメランパンツを一様に緑に染め上げ、それを除けば街中を闊歩するのは憚られる程にやや褐色の筋肉を惜しみなく晒し、意図せず保護色となっていたからかもしれない。
「…行った、か」
アレス達が去ったのを確認してから、本人的にはバッチリ身を隠していたつもりの男、カンダタはゴソゴソとパンツの中から先程ヒッサァが拾い上げたのと同じ機械装置を取り出した。
いつもの通り野宿に勤しんでいたカンダタの眠りを妨げるが如く、それは彼の頭部に飛来してきたのだ。
「う~ん…一体何だぁこりゃあ?よくわからんが、ビッグなお宝の臭いがするぜ!!」
カンダタはまんまるお目々をパチクリさせながら、様々な角度より謎の装置を睨め回す。
時折コンコンとノックしてみたり、回る部分が無いかと先端をひねってみたり。
試行錯誤を繰り返すカンダタだが、しかし進展はない。
「ふん、ふん、ふ~~~ん!!!」
しびれを切らしたカンダタは、癇癪を起こしてブンブンと機械装置を振り回す。
不意にカチリと、音が響いた。
「お!?…お?…おおお、お~~~???」
突如として目が眩む程の光を放ち始めた機械装置。
「…?」
やがて眩しさに耐えきれず閉じたまぶたを貫く光を感じなくなった頃、恐る恐る辺りを見回すと、赤々としたオーグリード大陸らしい荒涼とした大地が一変していた。
腐った血肉のような泥にまみれたレンガ造りの円型の部屋。
灯りと通気のためか申し訳程度に天井付近に並ぶ隙間を通して、波が激しく岩肌を叩く音が響いている。
そして、入り口も出口も無い。
そんな奇妙な部屋に、まさかの先客の姿があった。
黒のタンクトップにジーンズ、そして何故だか両腕にガッシリと嵌った超重量のリストバンド。
腰まで流れる髪はまるで火炎のように赤い。
「…君のその格好は一体どうした?追い剥ぎにでもあったのか?」
容赦なくカンダタスタイルを全否定するは、超駆動戦隊ドルブレイブのリーダー、アカックブレイブことセ~クスィ~。
パンツ一丁に覆面というスタイルは、どうしたってセ~クスィ~の頭の中ではまともな服装に該当しないのだ。
「…いや…むしろ追い剥ぎはオレ様っていうか…。何だ…この存在を否定されてる感じ…」
珍しく心に傷を負い、カンダタは四つん這いでうずくまる。
「どうした?…まあいい、君の服装よりも、大事なことはここがどこなのかと言うことだ。確か…私は弟からの手紙を受け取って…いやまて。弟だと?私に弟などいないぞ…?」
そんなカンダタのことを一旦忘れ、記憶を辿るセ~クスィ~だったが、どうにも頭がぼんやりして思考がまとまらない。
頭を振ってみても強烈な眠気のような脳内のモヤは晴れない。
しかし代わりに、意識の奥底から命令のように湧き上がる、強い感情がある。
目の前の男を倒さねばならない。
我らの王のために。
「う…王…だと…?」
ドルブレイブは国家に属しない独立組織だ。
王とは、誰のことを指している?
考えを巡らせど結論は出ないが、やることは決まっている。
「ドルセリン、チャージ!魔装、展開!!」
いつもの変身のシークエンスを踏まえども、名乗りは控えた。
この戦いに義は無いことを、催眠状態に陥っていようともアカックブレイブは本能で理解しているのだった。
続く