ところ変わって、すっかり毒気の抜かれた夢の中。
やや演技調子に高らかな声が響く。
「そこで女王陛下は毅然と仰っしゃられたのであります!『我が剣は今もまだ汝の首元に突き付けられておることを忘れるな…!!』」
ぐるぐるメガネに学者スタイルのウェディは、仕草も真似て、あの日のディオーレ女王の啖呵を再現して見せた。
「く~~~っ、痺れるぅ!いやぁ、まさかあの時女王陛下の直ぐ側に居たなんて!!エリーゴ先輩、まさしく歴史の生き証人じゃないっすか!」
「たまたまであります。それより、次はそちらの番でありますよ」
「そうっスねぇ…。最近の話なんすけど…」
エリーゴに続き、ミサークは親友ごましおと共に巻き込まれた、新型大地の箱舟にまつわる事件のあらましを語った。
ただし、ピッチピチックブレイブの話はオミットである。
「あの箱舟はヴェリナードも勿論通過していったので、実は小生、駅で見ていたのでありますよ。まさかミサーク殿が乗り合わせていたとは。いやはやいやはや。………ところで、ここは何処なんでしょうねぇ、ミサーク殿」
「さぁ…?」
ウェディの冒険者にして、元王立調査団見習い、ミサーク。
当時なにかと気にかけてくれた先輩、エリーゴ調査員との『その時歴史が動いたよもやま話』対決は、ミサークの眠るチームアジトのキッチンから、親友ごましおとチームメイトのウィンクルムの焼く香ばしいホットケーキの薫りが漂い、ミサークが堪らず目を覚ますまで続いたのであった。
~Fin~