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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2022-12-01 21:13:55.0 2022-12-02 01:04:35.0テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『決意の夜に』その12

「わお、朝から豪勢ねぇ」
息子ハクトを信頼の置ける冒険者に預けている間、無事退院したマージンの湯治も兼ねて、久方ぶりに夫婦水入らずのバカンスに出かけている。
ブーナー熱帯雨林にひっそりと佇む温泉宿、滞在二日目の朝食を前にして、ティードは歓喜の声を上げた。 
大きめのワンプレートに所狭しと収まるは、メインの二枚重ねのパンケーキに、カリカリのベーコンとソーセージ、彩りに宿の周りを取り囲む大自然を模した様な、アボカドとエビの添えられた翠のサラダ。
加えて、温泉のように湯気をたたえるオニオングラタンスープも鎮座しており、昼食も胃に入らなくなるのではなかろうかというほどの大ボリュームである。
 
「これ、バターなのか!?ティードさん、今度ウチでも作ってよ」
絵に描いたような狐色のパンケーキの上、スクレーパーで掬ったバニラアイスのような見た目のバターをナイフで拡げながら、マージンも目を輝かせる。
「あのね、ホイップバターはまとまった量でしか作れないの!とても3人じゃ使い切れないから、こういう所で堪能しといて頂戴」
「へ~い」
マージンをあしらいつつ、ティードはサラダから攻める。
 
野菜の新鮮さもさることながら、上からかかったオニオンベースの酸味の強いドレッシングが良いアクセントとなっており、運ばれてきた時は驚くばかりのボリュームだった朝食は手品のように二人の胃袋へと消えた。
 
空になった皿とスープカップを片付けてもらい、少し薄めのコーヒーを伴に食後の余韻に浸る。
せっかくの二人旅ではあるが、一息つけば話題に登るのは、やはりこの場にいない息子のことだ。
 
「最近のハクト、いろいろ抱え込んでたろ?」
「そうね。まあ、おおよそ見当はついてるんだけれど…」
「…俺もティードさんも、ハクトの歳くらいの時にはもう、傭兵暮らしだったからなぁ」
自分が大人に頼りにされているかどうか、など気にする暇もなく、実力がなければ死というふるいにかけられる世界で生きてきた。
 
その人生に後悔はないが、誇れるものでもない。
まして、こういった際に、自身の経験則からのアドバイスをしてやれないことは、心底歯痒く思う。
 
「他人任せにしたみたいで申し訳ないが、ヒッサァさんとのチームアップが、何かきっかけになればいいな」
「そうね」
マージンもティードも、当たり前の家族の形というものを知らない。
「………」
「…ボスの…お父さんのこと、考えてる?」
ふとした沈黙と、マージンの何処か遠くに向いた眼差しにティードは尋ねた。
 
「ん、ああ、まぁ…」
かつて二人が所属した傭兵団『サンドストーム』。
数多の団員と共に命を落としたその首魁が、実はマージンの父親であったことを知ったのは、まだ最近の話である。
 
マージンの父キャトルは、他ならぬマージンを護るため、最期まで父であることを明かさずに逝った。
それだけの覚悟を、愛を、自分は果たしてハクトに注いでやれているだろうかという疑問が、ふとしたはずみに頭を巡る。
 
「しんみりは無し!…あの人達の分まで、長生きしましょう。ひ孫の顔まで拝めるくらいに、ね?」
「そうだな」
「…ていうかね。それだけ大切に想っておきながら、こないだのアレは何よ?」
綺麗にまとまった、と思いきや。
「あん?」
急に険のある表情に切り替わるティードに対して、何のことか分からずマージンは訝しむ。
「セントハロウズイブのお供え!」
「おう?」
みなまで言われてもなお、マージンにはピンとこない。
 
マージンのマイタウンには、父母の因縁でもある竜にまつわるクエストの後、彼らの墓がひっそりと建てられた。
そして先日、初の先祖帰りの日を迎えたわけなのだが。
 
「線香のかわりにダイナマイト供える馬鹿息子がどこにいんのよ!!」
「いやここにいるだろ!」
「あり得ないっつってんの!今に罰当たるからね!?」
「親父は知らねぇけどきっと母さんは喜んでるよ!」「どんな姑よ!?あの世で挨拶する日が怖くなったわ!」
早朝のレストランで、喧騒は続く。
 
件の日。
小さな墓石の上で、何処かマージンに似た面影を持つ男女の亡霊が、息子の教育に関して同じように微笑ましい喧嘩を繰り広げていたことは、誰も知る由もない。
                      続く
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