天井を駆け巡る色とりどりのリボン。
純白のテーブルクロスの敷かれた長テーブルには、二段重ねのショートケーキを中心に、七面鳥の丸焼きや、ロブスターなど、豪華な料理が並ぶ。
華やかなパーティー装飾とはうらはらに、その日、ミサークやウィンクルムらが拠点としているチームアジトのメインホールには静寂と緊張感が漂っている。
広く空けられたホール中央には、ごましおのチームメイトが数日かけて作り上げた、鉱石の天井ランプを模した大きな紙細工、ピニャータが吊り下げられていた。
その前に対峙するは、目隠しを巻き、ひのきの棒を構えた本日の主役、ごましおである。
ピシッと口を真一文字に引き絞り、ギュッと音がしそうなほどにしっかりとひのきの棒を握り締める。
やがて、まわりをぐるりと囲むチームメイトが口々にごましおに指示を飛ばした。
「ごま、もうちょい右、右…あ、違うそっちは左だ!」
「少し前に進んで!あっ、行き過ぎた」
船頭多くして船山に登る。
もちろん皆悪気は無いし、どれも間違った指示ではないのだが、混線する誘導にごましおは右往左往し、なかなか位置が定まらない。
「右?右ってどっち!?」
「お箸を持つ方だよ。頑張って!」
「そう、そう、そのまま、そのままゆっくり…」
悪戦苦闘の果て、遂にその時が訪れる。
「「「「「「そこだっ!!!」」」」」」
「…!ちょいや~っ!!!」
満場一致のゴーサインのもと、ごましおが宙に舞う。お手本のようなアルテマソードの動きで振り降ろされたひのきの棒は、果たして何とか僅かにピニャータの腹をかすめる。
「…上手くいった?どう?」
未だ目隠しをしたままのごましおは手応えの軽さに不安を覚える。
しばしの静寂の後、キョロキョロと見えないままに首を動かした後、恐る恐る目隠しをずらしたごましおの頭上から、飴玉やミニドーナッツ、ステッキを模したチョコレートなど、一つ一つ丁寧に包装された種々様々なお菓子で構成されたお祝いのシャワーが降り注ぐ。
「「「「「「誕生日、おめでとう!!!」」」」」」「えへへ」
照れ笑いを浮かべながら、ごましおを中心に山をなすお菓子を手渡されたカゴに拾い集め、一杯になったら都度つまみ食いを交えつつチームメイトに配っていく。
「ミサーク、気の利いたイベントじゃないか。良く知ってたね、こんな風習」
ごましおから手渡されたパラソルチョコをかじりながら、ウィンクルムはとなりで飴玉を転がすミサークを褒め称える。
「ああ、昔、ドルワーム近くの小さな集落に立ち寄った時に、ちょうどパーティー開いててな」
そのまま、あの時に食べたフルッティディマーレは絶品だったなぁとすっかり回想に耽り始めたミサークをよそに、誕生日パーティーはごましおによるケーキ上の蝋燭の吹き消しへと移行する。
素敵なお祝いの一日は、まだまだ始まったばかりだ。 ~Happy Birthday~