「………と、いうのが報告になるわけだけど」
エルトナ大陸に位置するドルブレイブ基地、医務室のベッドに腰掛けて、包帯だらけのネコギシは、壁にもたれて腕組みをするセ~クスィ~に報告を終えた。
勿論、目の前のセ~クスィ~は見慣れた赤髪である。
今この場にいるのはネコギシからの緊急招集を受け集まったおきょうとセ~クスィ~、ブレイブ2号。
『…こうして白黒のモニター映像で見ると本当にリーダーにしか見えませんね』
『…』
ダイダイックブレイブの戦闘の模様を映し出したモニターの端、ワイプ画面に映る青髪のエルフの少年の言葉に続き、漆黒のスライダークヘルメットを被った女性が相槌をうつ。
彼ら、アオックブレイブとクロックブレイブは、ドワチャッカを挟み対岸の大陸であるプクランドの基地からモニターでこの会議に参加している。
「あらためて映像をチェックしたけれど、うん、音紋のパターンはアカックブレイブの魔装と100パーセント一致するわ」
おきょう博士の見つめるモニター上の解析グラフの2つの波形は、寸分違わず重なった。
「つまりはあの魔装は本物だと?」
セ~クスィ~は腰に巻かれた自らの魔装ベルトを撫でる。
「紛れもなく、この世に一本、今貴女の腰に巻かれているベルトと同じ物という解析結果よ。…私自身が信じられない事だけど、ね」
おきょうはじっと画面に映るもう一人のアカックブレイブ、親友ならざる親友の姿を見つめた。
「サロンフェリシアに寄った帰りとか、カツラとか隠し持ってたりとかしない?」
とすればと、ネコギシはセ~クスィ~に答えのわかりきっている質問を投げかける。
「無い」
「おきょう博士と二人して、『ドッキリ大成功~!』とか何とか言ったりしない?」
「実際に基地吹き飛ばしてドッキリも何もあるか」
「…ですよね~」
医務室にセ~クスィ~が顔を見せた時には思わず後退ってしまったネコギシだが、こうして話すセ~クスィ~はやはり当たり前だがセ~クスィ~であって、しかしやはり先に対峙したアカックブレイブの言動も間違いなく長い付き合いのアカックブレイブに間違いはなく、なお混迷は深まる一方である。
「…何処へ行く?」
不意に、終始無言でただ画面上のアカックブレイブをまんじりともせず見つめていたブレイブ2号が扉へ向かう。
「思うところがある。少々別行動をとらせてもらう。なぁに、基地からは出ないさ」
屋内ゆえ風もないのにたなびく赤いマフラーを翻し、警戒態勢で明かりを最小限に絞った暗い廊下へとブレイブ2号は消えるのだった。
続く