渦中のアカックブレイブが駆るドルバリオンには、もう一つの合体形態がある。
それがジェットドルバードである。
旗艦機であるマシンボードを中心に5機が左右に連結、肥大した重量をプロペラに転じた6基のタイヤが補い、漆黒の凶鳥がドワチャッカ大陸とエルトナ大陸を隔てる海原を舞う。
その巨躯の上で凄まじい風圧を魔装で耐え忍びつつ、アカックブレイブは気絶するように横たわりひととき身体を休めていた。
ドワチャッカで目的を果たした後、再び激しい身体の不調に襲われ、足止めを余儀なくされた。
その間に、ダイダイックブレイブは状況を伝達し、ドワチャッカを挟む両大陸では既に対策がうたれてしまっている事だろうが、致し方ない。
むしろ多少の苦境は望むところ、ようやく僅かに動けるようになり、こうして次の目的地を目指す。
ドワチャッカの基地内のメインコンピューターを破壊した事で、間もなく完成する予定だった大陸間ネットワークはひとまず潰えた。
過去において、もっとも今からすれば未来であるが、敵はまずドルブレイブ基地間を結ぶ電子の海と、それを成す演算システム、いわば超駆動戦隊ドルブレイブの根幹を乗っ取ったうえで、機械による理想郷を創るべく表立った行動を開始した。
目的に即し自らを『ユートピア』と名乗り、数多のマシン系モンスターを従え宣戦布告を行ったのだ。
ドルブレイブは下支えを失ったばかりか、敵との関与まで疑われ、対応が後手に回ってしまったことも事態の悪化に拍車をかけた。
ともあれこれで、間違いなく違った未来に進み始めたはずである。
しかしさっそくの誤算として、時代の確認の他、今現在も何処かに潜んでいるはずのユートピアを探し出すための探知機を兼ねていたガントレットが壊れてしまった以上、能力を最大限に顕現しうる可能性のある機械、すなわち、ドルブレイブ基地のメインコンピューターを虱潰しにあたるしかない。
そしてそれ故に、アカックブレイブは気が付かない。今この瞬間、ドルバリオンの中に潜むユートピアが、理想の身体を見つけ、感情を持たない存在なれど歓喜の声を上げていた事に。
どんなマシン系モンスター、コンピューターよりも優れた構造、そして、ユートピアの頭脳を100パーセント発揮しうる演算処理能力を備えたメインコア。
未来にて改良を重ねられた、本来であれば現存しないはずの、オーバースペックな機械端末。
アカックブレイブの魔装ベルトは、ユートピアにとってまさしく待ち望んだ容れ物であったのだ。
操縦と制御の為の、ジェットドルバードとの接続の回線を通して、ユートピアが魔装ベルトに潜り込む。
壊れながらにも警告を発しようとしたガントレットをユートピアが黙らせるのに、コンマ1秒もかからなかった。
続く