「………なるほど、ドルバリオンにドルセリオン。さらに合体してスーパードルセリオンか。初陣の相手にとって不足はない」
「こっちにゃ不足しかないだろオッサン…」
デッキアップされた巨人には左腕がなく、右太ももの装甲も装着前で、かろうじて胴体に乗っている頭部の操縦席には防護ガラスが存在しない。
「必ずケルビンはドルブレイブによる総攻撃前にスーパードルセリオンを仕上げてくる。こちらにも巨大兵装が必要だ」
かつて、ココソー率いたドルブレイブは、博士による予測から更に一日繰り上げて、ドルセリオンの強奪から4日後に反撃を仕掛けたものの、予測に反して既に修理完了していたスーパードルセリオンにより敗北を喫することとなった。
セ~クスィ~達の作戦決行も同じタイミングが予定されている。
怪我の治りをも犠牲にした、ギリギリのタイミングだ。
それ以上の前倒しは出来ない。
ココソーがセ~クスィ~達に合流するという違いはあれど、己の身一つであの戦況を覆せると思うほど、ココソーは自惚れてはいないのだ。
「私を肩に乗せ、スーパードルセリオンに近付いてくれるだけでいいんだ。あとは私が何とかする」
「そうは言われても…。オッサン、流石に完成度が低過ぎんか?」
マージンは不安を隠さず人型と呼ぶのも怪しまれる状態の巨人を見上げた。
近付いてくれるだけ、と言われても、近付きようがあるのかどうか。
「腕の一本なんざ飾りだ。偉い人にはそれがわからんのだよ!」
しかし胸を張って腕を組み、自信満々にフィズルは答える。
「偉くなくてもさっぱり解りませんが!?あと未完成の頭は!?」
「そこはほれ、アレがあるだろ?」
そう告げてフィズルはじっとマージンを見つめた。
「アレ?…アレって………アレ!?おいおいまさか、乗るの俺なの!?」
自身に向けられたフィズルの視線、その意図を汲み、マージンは悲鳴を上げた。
「何を今更。既にコイツの右拳を着装した際に、パーソナライズも済んでいるしな」
「勝手に悪魔の契約済ませてんじゃねえ!」
閉鎖空間にマージンの雄叫びが響き渡る。
「文句をたらたら言えど、それでも乗る。そんなお前が大好きだぞ」
ややあって、フィズルは渋々ながらも搭乗準備を進めるマージンに声をかけた。
「もしものときは絶対道連れにしてやるからな!」
梯子を登りながら、マージンは揺るがぬ決意を返すのであった。
「さぁ!グレートフィズルガーZあらためビッグF!ショータァイムだ!!!」
初代から引き続き、古代意匠を削り、滑らかな曲面に加工されたその姿にベースとなったウルベア魔神兵の面影は欠片も残っていない。
限られた時間で出来る限り実戦に耐えうるべく、太ももに取り付ける予定の装甲材を2枚重ねて右腕側面に貼り付け、重厚なシールドとした歪な漆黒の巨人がライトアップされる。
防御力の強化は重要だとは思うが、その時間があったならコクピットを先にどうにかして欲しかった。
不満を顔一杯に表明しつつも、マージンは懐からギガボンバーを取り出す。
「時代が望む時ッ!仮面ボンバーは必ずあらわれるのさ!とうっ!!」
せっかく登ったというのに、マージンは急拵えの搭乗用タラップから何故か飛び降りる。
そもそも確かに、ビッグFのコクピットと搭乗用タラップとの間にはマージンの指示で10メートル程の距離が空けられていた。
跳躍せざるを得ないがしかし、当然ながらまったくもって届くはずがない。
マージンは舞い降りながら自らの落着点めがけて、振りかぶったギガボンバーを全力で投球、接触信管の搭載されたそれは当然ながら大爆発を起こし、何やっとんだコイツはと点眼でポカンと見守る4人を爆風が撫ぜる。
当のマージンはというと、爆炎が肌を焼く直前、先に届いた爆風がベルトのタービンを軋むほどに高速で回転させ、充填されたエネルギーが強化スーツ展開機構を作動させその身を包み込む。
ハクトのブレイブジュニアスーツを踏襲しつつも、普段のマージンの工作服と同じ目立たぬカラーリングに抑え、デザインよりも実をとったシンプルなヘルメットが逆になんとも言えない外連味を醸し出している。
「おお~、ド派手だ!」
「なかなかアグレッシブな魔装展開だな。悪くない」フタバ、ココソーの肯定派。
「…紙一重で死ぬがな」
「フタバ、絶対に参考にしないよう厳に忠告する。一連のメモリ消去を推奨」
フィズル、ケラウノスの否定派。
四者二様の感想に見送られ、仮面ボンバーは爆風に巻き上げられて見事コクピットに降り立つのだった。
続く