「…そこの坊や」
「オレ?」
「このユクが、チケットが手に入るかどうか、占ってあげるよっ!」
ちゃっとポーチからタロットカードを取り出すと、軽くシャッフルする。
「さ、坊やも…えっと…」
「ごましお!」
「ん、ごましおくんも、カードを混ぜてごらん」
「面白そ!やるやる!」
わあっと両手をひろげ、しずしずとユクからタロットカードを受け取るごましおだったが、プクリポの少年の掌にはカードが少々大きい。
「あ…」
辿々しい手付きでシャッフルする中、ぴょんと飛び出すようにこぼれた一枚をユクは拾いあげ、絵柄を伏せてテーブルに載せる。
「これは、ジャンプカードって言ってね。山札に戻してシャッフルし直す術師もいるけど、ユクは天が君のために選んだカードだと思って、大事にすることにしてる。さぁ、裏返してごらん」
「どきどき…どきどき…」
くるりとごましおが裏返したカードは、『運命の輪』の正位置。
「『運命の輪』、ごましおくんが選んだアルカナが示すのは、良い流れに乗って、状況が変化していく暗示。きっと手に入るよ、チケット」
(インパスは赤かったけどね!それはもうトマトみたいに!!)
ユクの内心の葛藤と裏腹に、ぱあっとごましおの顔に笑顔が花開く。
「良かったなぁ、ごま」
「腹ごなしがすんだら、早速ヴェリナードの券売所に向かおうか」
「あ~、いや御三方。ちょ~っとこのまま、ね、この酒場、美味しいモノ沢山あるから。ね。ステイ、ステ~イ」
ユクは訝しむ3人にくるりと踵を返し、女将さんに詰め寄る。
「女将さん!この村に電話機ってあります!?」
「電話機かい?あ~、村長んとこなら…」
そういえばそうだ。
ピュアパールの鎮座していた部屋の壁、ウォールナットの落ち着いた色合いの電話機が据えられていたのを思い出す。
返事もそこそこ、建付けの悪い床に躓きながらユクは酒場の外へと駆け出した。
「…姉ちゃん、行っちゃった」
「部屋の隅の暗がりに、どっかと座る。必要以上に話さない。そんな、ミステリアスなのが占い師の定番だってのに。ま、でも一人くらい、あんなふうにドタバタな占い師がいても、いいのかもね」
自分たちを助けてくれた時のように、また駆けずり回って何とかして来るのだろう。
ユクが戻った時の為に、ナポリタンの準備を始める女将であった。
女将さんを通して村の異変を解決した恩人として名の通っていたユク、村長は快く電話機を貸してくれた。メモを取り出すまでもなく、頭に染み込んだ番号をコールする。
『はいこちら、魔法戦士団副団長のユ…は?ユク?なんです急に?そうか、ようやく団に戻る気に………は?チケットをおさえてほしい?ドルブレイブショーの顔出し回?』
果たして、ごましおがチケットを手にすることができたかどうかは、『運命の輪』の導きとユナティの頑張りにかかっている。
~完~