ユートピアが外に飛び出せば、まさにココソー転じたアカックブレイブの駆るドルセリオンのシステムO・O・Oにより数多の配下が爆散する瞬間であった。
圧倒的な数の優位は消え果てたが、まだこの機体が、ユートピア自身が残されている。
天女の衣の如く腰からぐるりと肩、背中を回り流れる動力伝達ケーブルは、ペタンを応用した重力制御による移動システムを兼ねる。
それを活かし文字通り音もなく高速でドルセリオンの足元に接近したユートピアは、大地を陥没させるほどの踏ん切りで打ち上げ花火の如く舞い上がり、教本に載るような美しい所作でドルセリオンの顎に強烈なアッパーを喰らわせた。
機械仕掛けとは言え、現在のユートピアの機体サイズは多少大柄なオーガと大差はない。
圧倒的な重量差を覆し、ドルセリオンが盛大に浮き上がる。
ドルセリオンが墜落するのを待つ間も惜しい。
そのまま肩に乗るアカックブレイブに回し蹴りを見舞う。
ドルセリオンを吹き飛ばすようなパワーでの蹴りである。
瞬く間に彼方へ吹き飛ぶ蒼髪のアカックブレイブを目に止めず、ブレイブ2号、ダイダイックブレイブ、アオックブレイブ、仮面ボンバー、クロックブレイブ、最後に赤髪のアカックブレイブと、矢継ぎ早に相手に接近し、殴り、蹴り、投げ、状況に反応する間を与えずに一撃のもと打ち据える。
ただでさえ連戦でドルセリン切れ間近、そこへきて多大なダメージである。
たちどころに皆の魔装は解除され、土に塗れると同時、地響きを起こしながらドルセリオンもまた大の字で地に沈んだ。。
意識を狩られず残るは、わずかに二人。
アカックブレイブだけは、ユートピアの攻撃にわずか反応し、魔装の強制解除は免れないまでもそのダメージを軽減すべく防御の姿勢をとっていた。
奇しくも、蹴り飛ばされたココソーはセ~クスィ~のすぐ隣に落着している。
「まだ、やれるな?」
震える膝に手を付き、蹌踉めきながらもセ~クスィ~が立ち上がる。
「誰に聞いてる?」
鏡写しのように、ココソーも満身創痍ながらセ~クスィ~の手を借りず立ち上がる。
「アカックブレイブに、だ」
「はは、そっくり返そう。まだやれるな?アカックブレイブ」
「もちろんだ」
節々から流れる血を拭いもせず、不敵な笑みすら浮かべて、4つの瞳が真っ直ぐにユートピアを捉えていた。
立ちあがったところで、おきょうからの通信が届く。『ユートピア、並びにそのコピーと思しき反応、その全てが今、二人の目の前の相手に集中しているわ!』すぐに逃げてと言いたい。
だがそんな言葉を二人は待ってはいない。
おきょうは歯を食いしばり、二人が必要とするであろう情報を伝えた。
熱源反応からユートピアの所在を検知するシステム。急拵えながら、その精度は今日これまでの戦闘中に実証されている。
しかしもう一つ。
端末のモニターの隅で10分を切ったカウントダウンのことは、どうしても伝えることが出来なかった。
それは二人の、とりわけココソーの戦いの邪魔になりかねない。
間違いなく過去最大の敵を前にして、だがそれでも確かな勝利への光明が、二人の目には見えている。
「「往くぞ!!」」
互いに残るドルセリン管は1本きり。
「「ドルセリン!チャージ!!」」
蒼天に浮かぶ太陽を指差すように高く掲げたそれを、ベルトへ叩き込む。
「正義を照らす情熱の炎!!」
「正義を貫く、情熱の炎!!」
「「アカックブレイブ!!!」」
雨雲に覆われ、その身を潜める時もある。
夜の闇に飲まれ、輝きの消え果てる時もある。
だが太陽は、必ず再び力強く輝くのだ。
続く