「…ちょっと荒療治が過ぎませんか?ヒコボシ様」
深緑の浴衣に身を包む長髪のエルフの青年が夜空に向けて呟けば、天の河の岸に輝く星から、答えが返った。
『いや、ちょっと背中を押してあげるべきかと思って。水無月も喜んで食べてくれてたし。結果オーライじゃない?』
いつもながらのおっとりした主人とのやり取りに、路傍の石に腰掛けて天の河を見上げる付き人カササギは頬杖をついてジト目で返した。
「はぁ…一歩間違えればただの恐怖体験ですよ。それに、彼らは兄妹のようですが」
『え!?』
ヒコボシから驚きの声があがって、カササギの目眩が強くなる。
「双子みたいにそっくりだったじゃないですか!最初に書いた短冊の願い事にも兄上と書いてましたし!………はぁ、やっぱりお気付きでなかったんですね…やれやれ…」
笹飾りの短冊に記された願いは全て天の河に流れ着く。
飾られずに捨てられたとしてもである。
下書きもまた然り。
そのチェックの甘さ故、毎年毎年、冒険者ユルールに迷惑をかけているというのに、困ったものである。
『うっ…面目次第もない…』
色々と問題はある。
が、主のもたらしたこの顛末は、けして悪くないように思える。
「…まあでも、マシン系モンスターで兄妹って…何でしょうね?オイルがおなじとか?5種族に当て嵌めて考える必要はない…のかも?」
指先同士、ともすれば直ぐにでもほどけそうなほどささやかに、しかし確かに手を繋ぎ神社から去り行くハクギンとフタバの後ろ姿を、微笑ましく見守るカササギであった。
~完~