真っ赤な太陽。
足の裏を焼く灼熱の砂浜。
歯を食いしばって全力で駆ける二人の背後から、楽しげな声が響く。
「待ち給えよマージン氏!」
「あははは、何処へ行くのさアマセくん!」
「「「「待てったら~っ!
!!」」」」
満面の笑顔でキラッと歯を光らせ、マッスルポーズを崩さずに全速力でオーガの群れが迫りくる。
「「うおおおおおおおおオ………!」」
デプスロガン封印の際の圧迫と酸欠からくる意識障害により、マージンとアマセは悪夢のビーチでムキムキの漢達と決死のランデブーの真っ最中であった。
「………まったく、たまには褒めてやろうと思ったら」
流石にいつもの魔装は脱ぎ捨て、鮮赤のビキニの上から燃え盛る炎がプリントされた白地のパーカーを羽織ったセ~クスィ~は、救護室に横たわりうめき声を漏らすマージンとアマセを呆れながら見下ろした。
「い~のい~の、ど~せマーちゃんのことだから、水着姿目当てで首突っ込んだに決まってるわ。さ、私達も楽しみましょ!あっちのイカ焼きが美味しそうだったのよねぇ」
ポンポンと尻尾の先で夫の額を撫でると、セ~クスィ~と腕を組んで、純白のビキニをまとったティードは宴の会場へと消える。
「良い景色だね」
イカ串を手に浜辺を眺めながら、ドワーフの姿に戻ったヨナがキシシと笑う。
「ああ」
「ええ、本当に」
ユルールとシアもまた、ヨナの言葉に相槌をうち笑顔を浮かべると、ピンクの髪の少女と共にレモネードのグラスを傾けるのであった。
「野郎共!!乾杯、だ~~~ッ!!!!」
そしてやぐらの上からは、花火の音すら押し退けて、もはや何度目か分からない大棟梁ロマンによる乾杯の音頭が鳴り響く。
今年もまた一つ、マージンとアマセに消えない傷を残し、一度きりの暑い夏が幕を開けたのであった。
そして…
「…ただいまなのであ~る」
「ああ、戻ったのか…て、臭っ!?何だこの臭い!!?」
腐敗した酢を頭から被ったゾフィーヌは隠れ家から締め出され、しばらく野外で過ごす事を余儀なくされるのであった。
~完~