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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 131

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レオナルドの冒険日誌

2023-08-13 22:37:02.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『白姫異譚』その24

「では、行ってまいります」
遙かな古の光景ではあれど、らぐっちょの垣間見た気候と地形、そして樹木の種類により、向かうべき場所は定まった。
絶対安静のかげろうを屋敷に残すのは心配であるが、医師にオスシ、今朝方から護衛をかって出てくれたダンもいる。
「少し待て」
かげろうは枕元に畳んで置かれた昨晩の着物の残骸に手を突っ込むと、蛤の貝殻を用いた小さな器を引っ張り出した。
「割れてなくて良かった」
「何です?それ」
「特製の軟膏だ。ほれ、足を出せ。痛めているだろう?」
「えっ、あ…」
隠していた負傷を指摘されて驚く間もなくぐいと腰を引かれ、いなりはぽすんと、あぐらをかくかげろうの膝に腰掛ける形となった。

「踏み込みの足音は聞いていた。意識して限界を超える力を出せるのは良いことだが、当然、身体はそれに耐えられん。私も昔はよく身体を壊したものだ」
死す時に最後まで残る五感は、聴覚だという。
出血に倒れた後も、いなりの疾駆の音をかげろうの耳は捉えていたのだ。
かげろうの指摘の通り、強過ぎる踏み込みにいなりの足指は未だに疼痛を伴っていた。

「うむ…骨に支障はないな」
もにもにと足の指を触られて、どうにも落ち着けるはずがない。
「いや、あの、ちょっ…」
「大人しくしていろ。薬が塗りづらい」
「…はい」
「これで良し!さしあたり、死ぬほど鍛えろ。己が身を限界を超えてなお折れない刃となせ。今日の120%を明日の100%にするのだ。その繰り返し。詰まる所、それしかない」
「はい」
ついつい膝の上である事も忘れ、かげろうの言葉を傾聴するいなり。
その様子を、驚きに皿のごとく見開かれた2つの眼が見ていた。

ふすまの隙間から覗くは2人の後ろ姿のみであり、敬愛する姉がかげろうにお姫様抱っこされているようにしか見えず、オスシはフリーズしてしまう。
まあ実際、太ももに腰掛けているのだから、あながち間違いでもない。
(えっ?ちょっ?誕生日の時から何か怪しい気はしてたけれど、やっぱり姉様とかげろう様ってそういう?え~~~っ!?)
やがてパルプンテでも受けてしまったかのように目をぐるぐる、顔を真っ赤にして、転がるように走り去るオスシにいなりが気付かなかったのは、果たして幸か不幸か。
しかしながら、腰が抜けかけ殆ど四つん這いで遠ざかるオスシの足音を、かげろうはバッチリとその耳に捉えている。
これでまた少し外堀が埋まったと、かげろうは一人ほくそ笑むのであった。

そしてその頃、勿論ながらいなり、らぐっちょと同行するヒッサァもまた、出立を前にダンに呼び止められていた。
「………ヒッサァ、お前さんとオレの仲だ、腹を割って一つ聞くが」
「何でしょう?」
「どうするつもりだ?」
「………」
「今回の件、連中の金払いの良さは異常だ。それに加えて禁足地の件。…わかってるんだろ?」
わざわざ言われるまでもない。
この一件を突き詰めれば、きっとろくでもないものが飛び出してくるだろう。

「…鬼が出るか蛇が出るか」
自分は御しやすい若造と思われているのだろうと、ヒッサァは空を仰ぎ苦笑を浮かべる。
今回の一件、隠されたものを隠したままでおさめるための破格の投資であると、ヒッサァも最初から分かっていた。
しかし、しかしである。
「どんな理由があったとしても、闇はすべからく照らすべきだと、俺は思う」
もう、間違えない。
それは決心であり、誓いであった。

「ハッ!つくづく、向いてねェ!とびきり上等の胃薬買っといてやる!存分にやってこいヤ!」
「胃薬よりも、とびきりキツイ酒と葉巻をお願いするよ」
「ふはははははははははっ!任せとけ!!どっちも秒でぶっ飛ぶ強ぇヤツ、用意しといてやるゼ!しっかし、ついに葉巻の味に目覚めたか?布教してきた甲斐があったぜ」
葉巻は潤滑剤としてダンと言葉を交わす際に嗜む程度、他ではこぼせぬ愚痴との相性が抜群だと感じるだけで、呼吸の代わりに葉巻を吸う彼と一緒にされたくはない。
しかし、この場で不要な反論は飲み込んだ。
おかげで心はもう充分にほぐれた。
語れば決意が鈍る訳では無いが、必要以上に話す時間も今は無い。
ダンに背を向け手を振ると、先に外で待つらぐっちょのもとへ歩みだすヒッサァであった。
                      続く
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