「…おお」
夢枕にたったしんりゅうの姿を、寝惚けたらぐっちょはいつぞやの竜とは気付かず、ただただ平伏する。
「そなたの真摯な願いはしかと届いておる」
「何卒、何卒お願いいたしますぞー」
「うむ。今宵はそなたの生誕の日であるからして、やぶさかではない。願いを1つだけ、叶えてやろうではないか」
「本当でありますか!ではでは早速、あの村に雨を…」
すぐさま切り出したらぐっちょであったが、しんりゅうがそれを遮り口を開く。
「ところでそなた、まだ幼きみぎりに『オーガの綺麗なねーちゃんに囲まれたい』などと我に願い出ておった気がするが?」
「げえッ…!」
神職にあるまじきかつての神頼みを晒され、首をしめられたような悲鳴が上がった。
「オーガのねーちゃんと引き換えにしてでも、他人の為に雨を降らせてほしいと乞い願うか?」
突き付けられた二択。
同時にらぐっちょのインナースペースでは、悪魔の姿のらぐっちょと、天使の羽根を背負ったイマジナリーヒッサァが喧嘩を始める。
「も、もちろんでありますぞー!」
しかし勝負は一瞬、流石と言うべきか、イマジナリーヒッサァはそれはそれは屈強であった。
もし万が一、オーガのねーちゃんを選んだ暁には、魂をこんがり焼き上げてやろうかと息巻いていたしんりゅうにとって肩透かしではあったが、かくして願いは聞き届けられたのである。
無論夢の内容など、何か物凄く恥ずかしい思いをしたという程度にしか記憶に残っていないらぐっちょであるが、天気の予報を見て黄金鶏神社に飛び帰り、老婆と願いが神に通じた喜びを分かち合う。
「良かったね、らぐっちょさま」
その様子を遥か天空から、らぐっちょだけの小さな小さな守り神がにこやかに見つめ、その隣でしんりゅうが胃の痛みを強めていることなどつゆ知らぬらぐっちょなのであった。
~HappyBirthday~