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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 魔剣士
レベル
: 130

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レオナルドの冒険日誌

2024-02-11 09:58:26.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『最後の晩餐を虎酒家で』その31

かつてカミハルムイが夜行石を回収した折、その囁きを聴き、それが邪悪と知ったうえで警備兵のことごとくを斬り裂いて再び世に解き放った大罪人。
後世に伝わる名は、悪鬼坊。
当然ながら、多大な犠牲を払いつつも遥か古に討滅された男である。
坊の名が示すとおり幼く見える顔立ちに、岩くれのような歪な一角を左のこめかみから生やし、しぃっと息を吐き出すその口内には鮫のような牙立った歯が覗く。

「はぁぁぁ…何年、いや、何十年ぶりだぁ?」
久々に手に入れた肉身を確かめるようにぶるりと震わせる。
悪鬼坊はいなりとたぬきちの刀を片手に握る刃で抑えつつ、不遜にも仰け反るようにして母体たる夜行石の様子を見やった。
既に背中は任せると告げている、かげろうは悪鬼坊には構わず、眼前のアカツキに注視して矢継ぎ早に剣技を振るって、アカツキはそれをただひたすら捌き続けていた。
悪鬼坊の目がすうっと薄く絞られる。

「ああ、ああ、ざまぁねぇなあ。だから死体に宿るなんざやめとけば良いものをよォ。クククッ、まあ、まともな頭ならお前と組もうなんざ、思わんわなァ?」だから、こいつらを死体に変えれば良いんだろう?
みなまで言わず、ぐりんといなり達の方を向き直るなり、あくまで握りは無気力にすら感じる片手のままながら、押し返されるほどに圧が増す。

「…此奴、もしや記憶が…」
肌の質感、屍肉の臭い、眼前の敵は、明らかに死霊系の魔物である。
如何に魔力で底上げされようと、ゾンビやがいこつでは、生前の強さに至ることはない。
他人の身体に潜り込んだ亡者では、その身体の正しい動かし方を知らないからだ。
しかし悪鬼坊は違う。
故に底が知れない。

「そうだよ狸ちゃん。くかかッ!あの石に触れちまった奴はなぁ、地獄にすら行けねぇのさ!!」
その身が朽ちて後も、宿主となった者たちの魂は怨嗟を棚引きながら夜行石の周りを渦巻いている。
生前、夜行石を宿した時の、全盛と呼べる肉身を与えられ、悪鬼坊は仮初なれど常世に返り咲いたのだ。

ぎりぎりと噛み合う刀を、あえて僅かに引き、均衡を崩す。
そのままでは倒れかねない、いなりと狸も押し込むでなく刀を引く選択をとることを予期し、その通りに無理矢理作り出した隙へ横薙ぎの一閃を捩じ込む。
しかしながら、後ろに引くとともに跳躍し、回転を加えて振るわれるいなりの刀と真っ向から打ち合う結果となり、共に無傷のまま距離が開く。
「そうこなくっちゃあな」
悪鬼坊は心底嬉しそうに舌を舐めずる。

「所で、狸はともかくだ。嬢ちゃん、可愛いなァ。その首、持ち帰って剥製にして飾ってやるよ」
いなりに向かいにたりと笑った悪鬼坊の顔面に、高速で飛来した何かが衝突し、その身体は大きく仰け反った。
「誰の許可得てキモい事言ってんだ、あぁん!?…たぬきち、娘さんとこ行って!こいつはいなりと私が何とかする」
「た、たぬ…?まあいい、抜かるなよ」
たぬきち呼ばわりに引っ掛かりを覚えつつも、狸は悪鬼坊の頭上を飛び越え、アカツキの下へ向かう。

「あ、私は手伝わなくてい~い?」
「リーネ、アンタは論外で頭数入ってんの!」
「粘着質な男はタイプじゃないんだけど~。身包み剥いだら、じにーのバイクの修繕費くらいは稼げるかな?」
「………そう願うよ。無理そうだけど」
咄嗟の跳躍、ちゃんとした着地など望めるべくもなく、前衛的な生け花よろしく、再会を果たしたばかりのじにーの愛車は前輪から地に突き立っていた。

「せっかく気分良く女口説いてたのによぉ。台無しじゃあねぇか」
逆再生するように姿勢を戻した悪鬼坊の牙には、容赦なく顔面を狙ったピンクパールの大珠が噛み締められている。
「お前らも上玉だなぁ。滾るねぇ!お望み通り、まとめて相手してやるよ!」
ぐっと力を込めピンクパールを噛み砕くと、悪鬼坊はかかって来いとばかりに刀を肩に担ぎ上げ、にたりと微笑むのであった。
                      続く
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