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常闇のバシっ娘

レオナルド

[レオナルド]

キャラID
: QB020-044
種 族
: プクリポ
性 別
: 男
職 業
: 海賊
レベル
: 125

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レオナルドの冒険日誌

2024-03-21 23:29:28.0 テーマ:その他

蒼天のソウラ二次創作『calm before the storm』その3

「さぁ今日からは、マーニャちゃんもミネアちゃんもいないからね。しっかり頑張っとくれよ!」
まさかのブッキングにより占いの客がゼロでもこの酒場に席を置き続けたのは、一番小さい部屋とはいえ宿泊費は無料、そして一日三食がサービスでついてきたからである。
女将さん自身、駆け出し時代に色々と苦労したからと、超破格の高待遇だったのだ。

独特な細長い形状のバスマティライスを、胡椒、ナツメグ、ギー、クミン、カルダモン、サフラン等々、両の指でも納まらない豊富なスパイスを組み合わせた複雑な味わいのスープ、そして海老やイカなどの海鮮と共に茹で蒸しした、この酒場の名物であるビリヤニを前にして、しかしユクのスプーンの動きは鈍かった。まあ確かに、如何にスパイスが鼻から押し入り食欲を猛烈に刺激するとはいえ、色合いもまさしくレンダーシアの砂漠にそびえるというピラミッドのような巨体は、朝食には重い。
しかしながら、ユクの食事を妨げているのは、他でもない昨日自らが行った占いの結果であった。

中央のカードは、『愚者』。
マーニャ、勿論、ミネアも連れ立ってであろう、近く二人は再び旅に出る。
まあ、2人の生業を見るに、それはコールドリーディングでも予想の付く内容だ。
続けてマーニャの過去を示す左側のカードを時を遡るよう順に面向ける。
『塔』と『太陽』の共に逆位置。
これまでの価値観を覆すような衝撃。
大きな、あまりにも大きな転機。

ユクはその結果を、もっとも近しい人物との別れと読み取った。
姉妹が二人で旅を続けているということは、恋人ではなく、母か父か、はたまた両親か。
それっぽく慇懃に言葉を飾り結果を語れば、薄目で確認したマーニャのリアクションは上々であった。
………ここまではインパスに頼り答え合わせをする必要はなさそうで、ユクは心の内でそっと胸を撫で下ろす。

無論、自分のタロット占いに自信がない訳ではない。だが時として、そう、タロット占いは長く続けてきたユクをしてその解釈は難解なので、とある食い違いが起こる事がある。

インパス。
本来は、宝箱の中身が金銀財宝ではなく、ミミックや毒霧などのトラップではないかを色として視覚的に判断できたりする便利な呪文であるが、類稀なる才能ゆえか、ユクはそれ用いてまるで占いの如く、相手の未来を色で予測することが出来るのだ。
これまでも、念の為にこっそり唱えたインパスと異なるタロット占いの結果が正しくなるよう、少し、そう、あくまでもほんの少しだけ、どうにかこうにかしてきたのだ。

そうして、気を良くしつつ続けてオープンすべく手を伸ばした、マーニャの未来を指し示す2枚のタロットはといえば………
「………体調悪いのかい?」
「あっ、いえ、そういうわけでは…」
確かに朝からビリヤニは重たかろうが、なにせこのどれだけ客が来なかろうとへこたれない娘は、昨日の朝も2羽分の胸肉を使ったタンドリーチキンをぺろりと平らげている。
それがかれこれ数分間、ぼうっとして一口も手を付けていないというのは、心配を通り越して不気味に感じる勢いである。

未来を指し示す2枚のタロットを、しかしユクはめくることが出来なかった。
意図せず発動したインパスが、マーニャを中心に視界を真っ赤に染めていたのだ。
この『赤』は、過去何度か見覚えがある。

この赤をまとった人物は…
「………不慮の死を遂げる」
言い淀んだユクを促すように、マーニャはミネアによる占いの結果を告げた。
「…!」
「やっぱりか~。違う結果が出れば、少しはミネアも安心するかと思ったんだけど」
やれやれと首を振ると、マーニャはお代をテーブルに載せて席から立ち上がる。

「あの…!」
お節介であれ何であれ、このままマーニャを行かせてはならない。
何かないか、運命を変える手立てが、きっと…
すがるように呼び止めたユクであったが、マーニャの意志は堅い。

「はっきり言って他人の同情なんて、1ゴールドにもならないのよね。これ以上、父さんのような悲劇は繰り返させない。何が待ち受けていようと、あたしの目的は、揺るがない」
ここ数日この宿屋に妹とともに滞在し、銭を稼いだのは、ある目的の為である。
『おうごんのうでわ』の原材料となりうる古代遺物の探索と抹消。
おおよその場所はダウジングで掴めているが、そこには未確認のダンジョンが広がっており、下準備の為に今日まで時間を要してしまった。

「…でも、心配してくれて、ありがとうね。あなたの事は、忘れないわ」
背を向ける様ですら、長髪が優雅に揺らめき、まるで舞っているかのように去る後ろ姿を、ユクはただ見送るしかなかったのだった。
                      続く
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