翌朝、二日酔いに痛む頭を傾けながら、ゆるゆると歩むマーニャの姿があった。
ケルビンにしてやられた屈辱と、敵ながらその言葉の重みは大きくのしかかっている。
それでも、歩みを止める姉妹ではない。
「………あーあ、ふられちゃった。ユクとさよならするのは、ちょっとだけ名残り惜しい気がするわね」
差し当たっては河岸を変え、ケルビンの行方を追いつつ、他のグランドラゴーンの脊椎と進化の秘法に連なる遺物の情報を集めていく予定だ。
駄目で元々、しばらく共に旅をしないかとあらためてユクを誘ったが、やはりあえなく断られてしまった。その結果は正直、占うまでもなくわかっていた。
「ユクさんには、きっと私たちと負けず劣らぬ大きな使命がある…」
マーニャの一歩後ろをいくミネアは、ポツリと独り言ちた。
「ん?何か言った?」
「…いいえ、何でもありません。行きましょう」
ミネアの水晶は、ユクの未来に、天空に浮かぶ鋼鉄の茨に包まれた巨城を映し出していた。
しかし、当代の勇者姫まで巻き込む、知の祝祭を巡るユクの冒険の行方は、また別のお話である。
「きっと何処かで、また逢えますよ」
「アンタが言うなら、そうなんでしょうね。その日が楽しみだわ。それじゃ、このまま、東の方に行ってみるのはどうかしら?なんでも、東のトンネルを通過すると、プレゼントをもらえることがあるとか………」「姉さん!つまらないことで旅の行き先を決めないでちょうだい!」
早速いつもの口喧嘩を始めた姉妹とは反対の道へ、ユクもまた歩みを進めている。
この一週間の間も酒場に占いの席を設けて、路銀はだいぶ溜まってきた。
目指すところまであと少し。
冒険者クマヤンの開く酒場で振る舞われるという500年前のレシピに基づくカレー、それが、此度のユクの最終目的である。
耳を澄ましても姉妹の賑やかな声が届かなくなったところで、物悲しさに振り返る。
遠く彼方にうっすら見える、二人の影。
………急ぎの用事ではない。
誘いにのって、もう少しくらい、共に旅をしても………
いやいや。
かぶりを振って、もとの道を歩み出す。
きっといつか、また逢える。
いつだって私達の頭上に広がる蒼天は、繋がっているのだから。
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