不慮の事故により始まったきんこ星人たちのアストルティアライフであったが、悪い事ばかりではない。
まずは、食文化の発展である。
きんこ星人の主食といえば、完全な栄養バランスを誇る青い飲料と各種の錠剤で、食事というより、もはやそれは作業に近かった。
そんなきんこ星人の眠れる味覚に火をつけたのが、『あかいムシ』である。
高温の油で揚げればパリパリの食感が口にも嬉しいこの食材は、比較的採取も易いこともあり、きんこ星人のQOLは爆上がりした。
更には先住民、とりわけ、火薬の臭いをまとったゴーグルとマフラーがトレードマークのオス、個体識別名『ばくだんま』との邂逅は、さかなぶくろなど、きんこ星にはない数々のオーバーテクノロジーの入手に繋がったのだ。
そして『ばくだんま』、すなわち、爆弾工作員マージンからは、アイテムのみならず耳寄りな情報ももたらされた。
返礼と友好の証として、あかいムシをポストへ詰め込むためにマージン邸を訪れたずっきんこが目にした1枚の写真。
そこには、長いヒゲをたくわえた見たこともない立派なサイズのあかいムシが写り込んでいたのだ。
都度、遥か母星の上司に使用許諾を申請せねばならないのが面倒だが、きんこ星人のテクノロジーをもってすれば、写真から場所の特定は容易い。
「もくてきちは ウェナしょとう ルシナむらの きんかい!イセの あかいムシを つかまえるのだ!」かくして、きんこ星人の遠足…ではなく、学術的探求の旅は幕を開けたのであった。
ともあれ、これは修理直後の慣らし運転、無理は禁物である。
ぷかぷかとのんびりじっくり、上へ下へと高度を変え好奇の目にさらされながら、やっとのことで目的地へと辿り着く。
「そっきんこ!うしをつかまえるビーム しょうしゃだ!!」
きんこ星人の空駆ける円盤から大海原へと、円形の光線がふよふよふよと断続的に照射される。
「わははは!だいしゅうかくだ!」
お目当てのイセのあかいムシはもちろん、付近にいた『くろいトゲ』や、『うねうねうごくイワ』、『しろいしょくしゅ』と『あかいしょくしゅ』などなど、大漁の海の幸をゲットしたずっきんこ達であったが、重大かつ根本的な問題を見逃していた。そう、最大積載量である。
「うわぁ!どうしたことだ!?いねむりうんてんでも あるまいし!」
急に船体が傾き、ずっきんこはポテンポテンと何度もでんぐり返って、逆さまの状態で壁に行き当たる。
先の漁獲量は、ずっきんこたち3人の重さを除いた積載上限である牛1頭分をゆうに超えており、帰路途中までは絶妙なバランスで保たれていたものの、エルトナ大陸上空にて風に煽られ航行不能に陥ってしまったのだ。
「いかん!どこか どこかないか!?あんぜんに おりられるばしょは!?」
傾いた船内、何とかコンソールまで歩み寄り、ぴぽぱぴぽとボタンを弾けど、コンピューターは解決策を講じてはくれない。
しかし幸運にも、ずっきんこの曇りなきまなこは、全周囲型モニターの片隅、山肌の中にポツリと、枯れ草が折り重なり柔らかそうな場所を見つけ出す。
「お!あそこだ!そっきんこ!!とりかじ いっぱい!!!そういん しょうげきに そなえろ!」
「ふ~っ、大漁大漁!………ん?」
姫竹でふざけていた罰として、ヤマから自主的に山菜の詰まった竹籠を預かって、我が家を目の前としたじにーの視界、遥かな上空に銀色の影が映る。
それはふらふらと不規則な軌道を描き、やがて………「ぎゃあああ!なんじゃっ、こりゃあ!?」
ずっきんこ!!と摩訶不思議な衝突音を響かせて、じにーの眼前、きんこ星人の円盤は茅葺き屋根にめり込んだのであった。
続く