「………相変わらず、独断専行ですか」
おきょうは頬杖をつきため息をこぼしながら、じっとりした目でモニター内のセ~クスィ~を睨んだ。
この部屋に監視カメラがあることは、もちろんセ~クスィ~も知っている。
だというのに予備の毛布を丸めて、無意味にフタバが寝ている様相を取り繕う様が、さらにおきょうの神経を逆撫でした。
「…だってさ~、相談したら反対するじゃない」
枕がわりに頭の後ろで腕を組み、リクライニングを最大限に身を預けたドルブレイブメンバーの一人、ダイダイックブレイブことネコギシはしししと笑みを浮かべる。
「そりゃそうよ!今のフタバちゃんは魔装も展開できないし、ケラウノスちゃんもいない。ゴルドスパインは確かに封印されているように見えるけど、頭骨に近付けばどうなるか分からない。不確定要素が!あまりにも!!多過ぎる!!!」
「…でも、アカックブレイブなら、何とかしてくれると信じてるんでしょ?」
止めようというのなら、今直ぐに遠隔で部屋の扉をロックすればいい。
しかし、おきょうがそうはしないことを、ネコギシはよく知っている。
「………理論と理性を無視して、他ならぬ私がそう思ってしまっていることが腹立たしいのっ!」
「それは仕方ないさ。長い付き合い、これまでのアカックの信頼と実績のなせる業だもの~。さて…」
ネコギシは通信端末を叩き、セ~クスィ~以外のメンバーと回線を繋ぐ。
『ウェナ諸島、ルシナ村にてS案件進行中。フルパワーのドルセリオンを要する可能性有り。各員、オリジナルのドルボードを最寄り基地の射出システムにセット、以後、各員の作戦行動には予備機にてあたられたし』
返事を聞く必要はない。
ネコギシは通達を終えると回線を切った。
いつぞや、ゴルドスパインを擁するケルビンの作、ゴルドブレイブを相手した際のスカイドルセリオンは、タイミング的にやむを得ずセ~クスィ~のドルストライカー以外、予備機のドルボードを投入し合体を行った。
その際には、予備機故のパワー不足は否めず、かなりの苦戦を強いられたうえ、今回もしかすれば、首の骨を用いた機械人形だけで苦戦した邪竜そのものを相手しなければならない可能性もあれば、完全なドルセリオンを準備するは必定であろう。
セ~クスィ~の無茶無謀を支えているのはこうした皆の協力であり、そしてセ~クスィ~もまたそれをちゃんと理解しているからこそ、全力で皆の期待に応えてきたのだ。
そうこうするうち、モニターの中の2人はいよいよ部屋を抜け出し、曲がり角の度にひょっこりひょっこり先を伺いながら出口を目指す。
「…しかし姐御。この儀式には、一体何の意味が?」セ~クスィ~は枕カバーを手ぬぐい代わりに自身と、フタバにも鼻掛けでまとわせていた。
いわゆる、泥棒被りである。
基地をこっそり抜け出すにあたり、これぞ過去一度も失敗していない鉄壁の発覚防止対策なのだとセ~クスィ~は言う。
「えっ………?…本当に…?」
大地の箱舟での和解を経て以降初めて、セ~クスィ~の発言に疑問を抱くフタバなのであった。
続く