状況の把握は遅々として進まずとも、今後の方針は話し合うまでもない。
各々の目的はいまや全て、夢幻郷に重なった。
目下、問題は追跡の手段である。
「ウルベアンチェイサーは運転の僕を除けば、3人しか乗れません」
ウルベアンチェイサーには、どうしてもハクトの手づからにハクギンブレイブへ渡さねばならないモノが懸架されている。
そも前提としてケルビンの魔改造の影響からウルベアンチェイサーは不安定であり、ハクト以外に操舵は難しい。
「ドルブレイドもドルストライカーも水上仕様ではないからな。長時間の海上走行は不可だ」
乗員が限られる以上、生還率にも関わる戦闘能力を基準とすべきであるが、らぐっちょとセ~クスィ~が各々聞き及んだ話によれば、夢幻郷に入るには鍵が必要となる。
すなわち、りゅーへーの搭乗は不可欠なのだ。
「りゅーへーが行くなら断固私も行きますぞ!!」
「う~ん………らぐっちょさんくらいなら、吊り下げで何とか………」
こういう時、プクリポの小さな身体はメリットともなる。
「リアルお荷物扱い~~~!?いやしかしやむをえんですな……」
タラップをよじ登るりゅーへーに続き、いそいそとらぐっちょはウルベアンチェイサーから垂れ下がるマジックハンドに自ら挟まれる。
残る席は2人分。
セ~クスィ~は確定として、宝石魔法をもつじにーか、タロットの御業で汎用性に富む自身か………
瞳を閉じてしばし思案に入らんとしたユクを、無遠慮な声が遮る。
「あ~、あ~、お前たち。チーム分けは可及的速やかに決めたまえよ?」
その不快極まる偉そうな声は、上から目線の口調と同じく、プクリポの低身長にあるまじき高所から聞こえてきた。
「なっ…!?」
違和感に振り向いた一同は、そびえ立つ銀の山を目の当たりにすることとなる。
再び起動したヤクト・メイデンドール、新たな姿はさながら、はぐれメタルキングの様相を呈し、王冠にあたる位置にケルビンの頭が鎮座している。
助けようとしたものの二の舞いとなったのだろう、ケルビンから少し離れた所、ケラウノスマーク2が操るてっこうまじんの下半身が生えていた。
やけにピンと伸びた両足が綺麗なVの字を描いていて、なおのこと一同の癇に障る。
「あやつ、ひそかに新しいコアを埋めていったのだ。起動する前に制御を奪い、この機会に常々邪魔なアカックブレイブを葬る尖兵にするつもりが、うむ、うまくいかないものだな」
「「「馬ッ鹿野郎~~~っ!!!」」」
唯一ケルビンを除き、敵の置き土産に対し警戒しなかったのは充分に失策であるが、分かっていて状況を悪化させた責任を追及する権利くらいはあるだろう。
続く