思わぬタイムリミットの出現に、ユクは一つ、大きく深呼吸した。
聞けばフタバはアカックブレイブやハクギンブレイブと同じく魔装を持つが、その力は今、ハクギンブレイブの手により封じられているという。
無論、セ~クスィ~とフタバにインパスの青は見えず、ますますもって合理的ではない。
そっと、ポーチの中の山札に手を伸ばし、直感に従うまま上から7枚目に触れて……しかしユクは、札を引かずに声を張った。
「こいつはあげはさんに酷いことしたやつだから、私たちでとっちめる!だから、セ~クスィ~さん、フタバちゃん、あっちは任せるね!!」
竜の封印されし夢幻郷。
心躍らぬ方が無理あれど、今日この時、そこに至るべきはフタバであると、ユクの直感は告げていた。
「心得た!」
ひょいとフタバを小脇に抱えたセ~クスィ~が飛び乗るやいなや、ハクトはウルベアンチェイサーをフルスロットルで発進させる。
「あばば~~~ッ!?砂、砂浜こすってる!砂肝がニモパンになっちゃうですぞーーー!!?」
ドルボードの駆動音と、負けず劣らぬらぐっちょの悲鳴を聞き付け、ヤクト・メイデンドールの成れの果ては明らかに軌道を変えた。
大方、追跡を阻むようにプログラムされているのだろう。
「させない!!」
荒波の如く身体全体をうねらせてウルベアンチェイサーに迫る敵に対し、ユクはタロットカードを抜き放つ。
それは、先程指をかけた山札の上から7枚目。
表面を見ぬままに掲げたタロットに魔力を込めれば、闇の魔力の爆発が起こり、敵を怯ませた。
「やっぱり、ね」
普段、インパスの結果と相反するタロットの導きに頭を悩ますユクであるが、今日この時の占いの結果こそは間違いないと胸の鼓動が保証する。
『死神』のカード、ワンオラクルの結果が意味するは、破壊と再生。
砕けて散った兄との関係は、きっと新しいカタチで芽吹くことだろう。
「……さぁて、いっちょやってやりますかね」
意気軒昂なユクに負けじと、並び立ったじにーはニヤリと微笑み、ぽきぽきと拳を鳴らす。
「まだ身体ビリビリしてるんだから、責任取ってもらわないと」
電撃はモモの仕業であるが、まあ、そも捕らわれの身とならなければ、というのも正論である。
「そうそう、泳いででも行きたいくらいの冒険を棒にふるんだから。存分に憂さを晴らさせてもらうよ!」「……誰か1人くらいは吾輩を気遣いたまえよ」
勿論、ケルビンの嘆息に返る言葉はないのであった。 続く