ともあれ挨拶も早々に、2人はクリスマスマーケットに居並ぶ露店へとくりだす。
奥に佇むグランドタイタス号が霞むほどの立派なツリーを見上げてから、どこかマージンの面影がある爆弾割り人形、もといクルミ割り人形に笑い、ダーツの店では、フライナが投げナイフの腕前を存分に披露して店主を青ざめさせた。
一巡りして歩き疲れたところで、停泊中で一般開放されているグランドタイタス号の甲板に上がり、トッピングのマシュマロが蕩けるほどの熱々のココアで一息つく。
ハンドベルを携えた聖歌隊の横で、何処かヤケクソ気味に踊り狂うトナカイスーツの御仁に、一方的にコーデの師と仰ぐじにーの面影が見える気がするが、まあ気の所為であろう。
その隣では、ウェーブのかかったプラチナブロンドヘアのサンタがからからと笑い、寒さが吹き飛ぶほどに何とも賑やかである。
最近のハクトはレンダーシアを飛び回っていて、今日は久々の再会、いつまでも話は尽きない。
ちびちびと飲み進めていた甘ったるいココアもやがてマグカップの底が近付いてきたあたりで、ハクトはプレゼントの包みを取り出した。
「開けてみて」
リボンを解けば、ミトン型の革手袋が顔をのぞかせた。
「まぁ!素敵!!」
およそ10年越しのリベンジ、きっと先の手袋も引き続きフライナが愛用してくれることを見越して、今回はデザインを変えた。
「さぁ、フライナさん」
ハクトはそっとフライナの左手をとる。
手づからに、被せてくれようというのだろう。
そういうことができる点も、ミトン型の利点である。
口にこそ出さないが、ハクトがこれまで、サイズの合わない手袋を贈ってしまい、恥ずかしさと悔しさと申し訳なさを感じていたことに気付かぬフライナではない。
いち早く、使い心地を試してみて欲しいのだろう。
フライナとて、それは望むところである。
満面の笑みを浮かべ待つフライナを前に、ハクトは緊張から小さく深呼吸し、肝心の手袋ではなく、その下に隠した小箱を手に取った。
「え……」
掌を包み込む革の温もりの代わりに、冷たい金属の感触が、フライナの薬指の先から根元へと滑る。
「……どうかな?今回は、サイズもちゃんと合っていると思うんだけど」
驚きは一瞬、フライナの表情は今にも泣き出しそうな笑顔に転じる。
マストに吊るされたヤドリギの飾りが見守る中、狙いすましたかのようにハンドベルも高鳴るのであった。
~MerryChristmas~