「アクセスッ!!!」
アルファを力尽くで止め、グランドラゴーンを滅す、ないしは再度の封印、そしてケラウノスは出来れば無傷でフタバの元へ遺す。
タスクの多さに、目眩がしそうだ。
しかしやってのけねば。
僕は、最高の兄上なのだから。
接続されたメモリーキューブに記されし古の弓兵、いや、槍兵のスペックを再現するため、基本性能では至らぬとみて魔装を侵食し、設計にない深緑の姿を導き出す。
それが、モード・レオナルド。
しかし拡張された魔装をもってしても届かぬ差分は、ダメージとなってハクギンブレイブの身体に跳ね返る。
メモリーキューブの構成体たる液体金属による補強を失っている今、その反動はまさに致命的だ。
「ぐ……っ…!」
フレームがへし折れそうになるほどの内圧をこらえ、ケラウノスを握りしめて地を蹴る。
頭骨の侵食により、今や2本脚で起立したメタルドラゴンの様相を呈するアルファのスーツ、狙いは言わずもがな、その長く伸びた首だ。
ケラウノスの一本角から、ありったけのドルセリンが粒子の刃に変わり迸る。
けして敵を過小評価するわけではないが、この全身全霊の一閃ならば、必ずや首を断ち切れる。
永遠に感じるほどの刹那、輝く刃は刻一刻と敵に近付き、激しい金属の衝突音が響き渡る。
「くっ……」
流石にそうは甘くない。
しかしそれにつけても、眼前の状況は想定の外過ぎた。
ケラウノスの刃を受け止めたのは、スーツの背中に伸びる触腕。
蜘蛛脚のようだった触腕は今や先が竜のあぎとのように割れ、刃を咥え込んでいた。
ボディを蹴り、ケラウノスを振り解くと同時に追撃を警戒して距離を取る。
その間にも2本触腕は更に変容を遂げ、金属の首を中心に据えた三つ首の竜へと変容を遂げた。
この姿がアルファの意図したものなのか、彼女の姿は重厚な装甲の奥にあり確かめる術はない。
ただ確かなことは、6つの瞳が敵意に満ちているということだけだ。
右の首が咆哮をあげると同時、雷が降り注ぐ。
回避した先に、左の首から地面を深々と切り裂く程に圧縮された水流が走り、逃げ遅れたマフラーの先を断絶した。
逃げてばかりでは埒があかない。
ケラウノスの石突を地に突き立てて急制動をかけ、ぐるり側面から回り込む。
雷の軌道が不規則なのは厄介だが、水流にせよ、予備動作があるのだ、回避は易い。
更に近付けば近付くほどに、長い首が仇となって、狙いが散漫になる。
あと少し。
あと少しで、ケラウノスの剣閃の域に入る。
接触にそなえケラウノスを肩に担ぎ上げた瞬間、ハクギンブレイブの視界は紅蓮に埋め尽くされた。
これまで沈黙していた中央の首から、業炎が噴き出したのだ。
一帯を埋め尽くす程の灼熱、逃げ場などない。
ハクギンブレイブの視界は各所の損壊を告げるアラートで真っ赤に染まり、火炎の渦から抜け出せぬままにブラックアウトした。
一方、限界速度を越えて洋上をひた走るウルベアンチェイサー。
操縦桿を握るハクトは、ようやくその視界に夢幻郷を捉えた。
「Yo!Say!!風が!ワタシを刺激するぅですぞーーーッ!!」
ケルビンにより急造されたマジックハンドの先には、勿論風防システムなど備えられていない。
辿り着くのが先か、はたまた……
宙吊りで強風に晒されて羽を舞い散らすらぐっちょもまたハクギンブレイブ同様、何かしらのリミットを迎えようとしているのであった。
続く