「それではこちらで地図作成が出来る人材を用意しておきますので、トーラ殿はそちらと話しながら制作の進行をお願いします。」
夕方過ぎままでかかった会議が終わり、魔法戦士団のサロンから出て行く2人を見送ったユナティは一つ溜息をつく。待機を命じられていたミャジが入れ替わりで入室して来る。
「お疲れ様~。あったかいものどーぞ。」
「あったかいものどーも。で、何を企んでいる?」
ユナティは胡散臭い者を見る目でジトりとミャジへ視線を向けつつ、紅茶に口を付けた。
「レヴィヤットでもレヴィヤルデでも良いから、私も乗せて欲しいなって」
事もなげに口に出した名前にユナティは口に含んだ紅茶を盛大に吹き出した
「ゲホッゲホッ・・・ミャジまさか突入作戦の事を外で盗み聞きしていたのか・・・?」
「まさか!冒険者仲間から、女王陛下の名前で大規模なクエストの発布が有ったのを聞いてただけ。」
「だとしても、それが特務艦の名前につながる理由にはなるまい。」
突入作戦のクエストは大々的な募集を行っている。だが予定の作戦内容は当人であるギブやユナティ達一部の上層部、それ以外では実行に必要不可欠な魔法建築士と大規模魔術を行使する魔法使いと言った限られた面々にしかまだ公開していない。
「最近城下町に魔法建築工房の棟梁さん達が来てたのを見たし、顧問魔術士様の所にも合成魔術の賢者様が来てた。それにユナティちゃん、ロスウィードさんやアスカさんとマメに会って打ち合わせしたりもしてたでしょ?そうなると使う可能性が有るのはあの特務艦かなって。最後は少し鎌をかけてみました」
あ、もし本気で隠すなら今言った主要メンバーはもうお城に囲っておいた方が良いよ~などとへらりとのたまうミャジにユナティは頭を抱えた。
「君に言われなくとも彼らには数日前から場内で生活してもらっている。反応してしまったのは私の不徳だが・・・」
「って事で、私もその作戦に・・・」
「が、それは話が別だ。もう既に乗艦してもらう冒険者には集合してもらいつつある。今回は乗船限界まで人を集めているから、どの道貴殿の乗艦出来る枠は残っていない。」
皆まで言わせぬとばかりに、ユナティはミャジの言葉を遮る。
「そこをなんとか~トーラちゃんがいたって事は、いずれJBの兄さんやダンさんも来るんでしょ!?私もあの人達と一緒に戦いたいの~」
「無理だと言っているだろう!搭乗する人員は先程貴殿が言っていたスペシャリストの方から指名して貰った者も居るんだぞ。」
あくまでも譲らないユナティとその 足元にくっつくミャジだったが、そこに再び魔法戦士団の伝令が入って来た。
「何・・・?ふむ、分かった。直ぐに対応しよう。」
「どったのユナティちゃん?」
「喜べ。丁度作戦に貴殿向きの仕事が出来た。明朝改めて説明するので、今日は詰所に泊まっていくと良い。」
一瞬反応の変わりぶりに戸惑ったミャジだが、参加できる事を理解するとパッと顔を明るくした。
「やったぁ!それでこそユナティちゃん!やっぱり持つべき上司は権力とパイプがある人だよね!」
現金な事を宣いつつ、余程楽しみなのかそのままスキップでサロンを出て行く。それを見送ったユナティは伝令に来ていた団員に一つ命令を下すのだった。
ゴトンゴトンと揺れる音が聞こえる
何度も感じた事があるような振動にミャジは目を覚ました
「・・・アレ?ここは・・・?」
寝起きで回らない頭で周囲を見渡すと、ヴェリナードの封蝋が付けられた手紙が枕元にある事に気付く。嫌な予感を感じつつミャジが封を切ると、中からは手短な内容の司令書が入っていた
『件の作戦のため、防衛軍前線に回せる物資が少ないため、少数だが魔法戦士団も派兵が命じられた。魔法戦士団員ミャジは本日より1ヶ月の獅子門防衛線警戒の任を命ずる
魔法戦士団 副団長ユナティ
追伸:ちゃんはつけなくて良い』
読み終えたミャジが慌てて窓開けて外を見ると、はるか後方に小さくなって行くウェナ諸島の影が映る。
振動に覚えがあるはずである。ここは冒険者時代に慣れ親しんだ大地の箱舟の寝台車では無いか。
「は、は、は、は・・・謀ったなぁあああ!
ユナティちゃんーーーーーーーーー!?」
哀れ出荷されて行く一尾のウェディの叫びが、木霊する事はなく広い海へと吸い込まれて行くのだった。
最近ソウラファンと交流させて頂く機会が多く、そう言ったところで受けた刺激でやっちゃいました。勿論、これは2次創作作であり、DQ10と蒼天のソウラとは設定に矛盾が生じる事もあると思いますが、そこは優しくスルーして頂けたらなと(フォースブレイクSとか自分なりにソウラの世界を自キャラに旅してもらうのは楽しかったです。読んで下さった方、ありがとうございました!