こちら、日頃からお世話になってるロスウィードさんに、誕生日のプレゼントにかこつけて書いた物です。普段の二次創作以上に冒険者の中の人要素が濃く、ソウラの原作成分を薄くして書いてますので、ソウラの二次創作ではなく、突入部隊の二次創作とさせて頂きました。そう言ったものが大丈夫な方のみお進み下さい。
「こちらM。ターゲットとサポーターは2階へ上がり間もなくポイントに突入する模様。」
白い紙型で出来た人形から流れる声を聞きニヤリと笑う。
「ターゲットが来ます。各員配置に付いてください。」
宣言とともに部屋の中に居た面々が頷いた。
「今日は非番だというのに急な呼び出しとは、全く中間管理職は辛いな。」
文句を言いながら廊下を足早に歩くのは、軍服を纏った男性『ロスウィード』とその後ろに付き従うのは彼のプライベートコンシェルジュである女性『クレア』言葉通り非番の予定であった彼は休日をいつものアロハシャツ姿で怠惰に過ごしていたのだが、そこに入ったのがすっかり副官扱いされるようになったウェディの女性『アスカ』からの出動要請であった。
「しかし、アスカにしては妙に要領を得ない呼び出しだったな。」
彼の言う通り、冷静な彼女にしては「とにかく急いで」や「込み入った事情があるので細かい内容は現地で」等、要領を得ない内容であった。
「まあ、アスカの事だ、妙な事はないだろう。むしろ無視したら後の仕置の方が怖い。」
何だかんだアスカを信頼しているロスウィードの言葉に、三歩後ろを歩くクレアは内心ほくそ笑む。そんな話をしているうちに2人は指定された集合場所。ヴェリナード王城2階にあるサロンの一室にたどり着く。
さて、一体どんな面倒ごとなのかと思いつつ、ロスウィードは部屋の扉を開いた。
「「「総司令!誕生日おめでとう!」」」
パタン
閉じた。そして振り返り駆け出そうとする。
「諦めてお入りくださいませ。」
が、そこは周到な冒険者。そうなる事を予期して事前に打診した間者(クレア)の蹴りにより扉を押し開け室内に放り込まれる。
「そうか、君はそう言うやつだったな」
「そう言うやつでございますロス様。」
憎々しげに見上げるロスウィード。しかし、彼とてあの戦いの指揮をとった歴戦の冒険者。立ち上がる素振りもなく低姿勢のまま全速力で扉に向かって走り出す。女性であるクレアの手元より更に低い姿勢ですり抜け、開いたままの扉から廊下へ飛び出・・・そうとしたところで弾かれたように立ち止まる。
冷や汗を垂らす彼の眼前に突き立つのは音もなく飛来した弓矢。視線を巡らせ、王都の外輪状に青い人影がある事を発見する。見られている事に人影も気付いたのか、呑気に手を振っている事がロスウィードにも分かり思わず額に青筋が浮かんだ。
「無駄ですよロス様。この室内に入った時点でロス様は詰んでいます。素直に祝福されて下さいませ。」
いけしゃあしゃあと主人を売ったコンシェルジュの言葉。彼女の手元にはいつの間に取り出したのか1枚のプラカードが握られている。
『ドッキリ☆サプライズパーティー』
クルリと裏返すと別の文面が描かれており
『素直に祝われるまで出られない部屋』
思わず頭を抱えるロスウィードに、恐る恐る声を掛けたのは、猫耳のようなプディンヘッドを頭に乗せた女性の『みなゆり』
「ご、ごめんなさいロスウィードさん・・・ご迷惑だったでしょうか?」
「いいえ大丈夫ですよ。ロス様は少々照れているだけなのです。」
質問されたロスウィードではなく横のクレアが答える。
「私達、どうしてもロスウィードさんの誕生日をお祝いしたくて、それでクレアさんに相談していたら、魔法戦士団の方?がどうせならサプライズパーティにした方が喜ぶからって・・・クレアさんも否定しなかったし・・・その、ごめんなさい!」
涙目になりながら本気で謝るみなゆりに、ついいつものクレアの悪ふざけやアスカの仕置から逃げる感覚で逃走しようとした事に罪悪感を感じるロスウィード。彼とて祝福される事が嬉しくない訳ではないが、流石にこの年齢になって一回り年下の人達に祝われると言うのは少々気恥ずかしかった。
「すまない、勿論気持ちはとても嬉しいとも。」
そう言って大人しく用意された席に着くその背中は何とも複雑な感情を背負っている様であった。