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星辰の羅刹王

ミャジ

[ミャジ]

キャラID
: PH644-410
種 族
: ウェディ
性 別
: 女
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 120

ライブカメラ画像

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ミャジの冒険日誌

2019-12-25 19:50:04.0 テーマ:その他

ブリーフィング・ワン~蒼天のソウラ二次創作⑨~



手を叩く。

「よーし!無理!逃げよう!」


さも名案とばかりに声を上げたミャジに、帰って来たのは酒場の沈黙のみであった。





場面は数分前に遡る。
海岸線には大量の軍勢。後方には5体の魔鐘。そして肝心要の防衛結界は敵の工作で機能不全。絶望的な状況に、歴戦の冒険者達である彼らも、心が折れそうになる。

しかし、そこで戦場に妙な動きがあった。
先程までひっきりなしに攻めて来ていた魔物達の動きが止まっている。いや、まるで引き潮の様に徐々に後退していく。
このまま数で挟撃され押し潰しに来る事を覚悟していたアレスは、あり得ない状況に、踊り場から眼下の海岸線に目を向ける。
海岸線まで後退した魔物に代わり動いたのは、敵の首魁であるネブドであった。

「冒険者共に告げる!今から1時間後に全兵力を持って攻撃を再開する!それまでに尻尾を巻いて逃げ出すのであれば追わん。存分に逃げるが良い!」

それだけ告げると、ネブドは玉座にて瞑目する。
予想外の敵の行動に困惑する冒険者達だったが、本当に魔物達が動かない事を確認すると、一度休息と今後の方針を練るために街中央の酒場へと集うのだった。


「敵の包囲と目論見の破壊。お見事ですネブド様。」
座して瞑目するネブドに恭しくこうべを垂れるのは伝令の為離れていたバナゴル。

「これで心を折れるならばそれで良し。予定より冒険者共の抵抗が激しい。これ以上兵を失わずに済むならばそれに越した事はあるまい。」

淡々と現状を整理するネブド。しかし、ここで彼の口元が歪む

「それに、これを超えて挑んで来る奴らならば、早々に折れる事は無いだろう。」

愉しげに語る主人の横顔に、バナゴルの背筋に冷たい物が走る。
腹心すらも恐れるネブドの闘いに対する圧倒的なモチベーション。波皇帝は、ただ笑みを深く、冒険者達が消えていった街の中心を見続けていた。





「ソーメン、何かあったらすぐ伝えるんだよ?」

みなゆりがそう言って自らの相棒に見張りを任せる。ネブドは1時間後と宣言したが、警戒は必要だと考えたアレスの指示だった。
そうして酒場の中に戻った時である。
冒頭のミャジの台詞に、酒場の空気が張り詰めたのは。

「このまま、尻尾を巻いて逃げ出せってのか?」

真っ先に反論したのはヒューザ。殺気とも取れる程強くミャジを睨み付ける。
それもその筈。彼にとってジュレットはある種特別な街だ。ルシナ村、そして今回と背中を押してくれた小さくも大きい存在である『彼女』が住む街なのだから。
だが、ヒューザの目線の先、ミャジはどこ吹く風と話を続ける。

「現実的に、このまま『無策』で戦闘を再開しても、100回やったら100回負けるよ?」
「死にたいなら止めはしないけど、街の奴らがもう充分逃げた以上、無理に戦闘を続ける意味って何?」

ミャジの言葉を引き取り、撤退の方に付いたのはラズ。
その様子を見て少し戸惑ったみなゆりだったが、一つ息を吸うと、自らの意志を口にする。

「私は、戦いたいです。だって、街の人たちが帰る場所が無くなっちゃうのは、凄く悲しい事だと思うんです。」
「そりゃ、勝ち目があるなら付き合うつもりだったけど、この状況じゃ余りにも割に合わないわ。」

変わらないラズの意志と強い眼差しに思わずみなゆりがたじろぐ。
アレスは、自身が今回の戦闘を指揮した以上、下手にどちらにも肩入れする事は出来ない。アレスがどちらかに賛成した時点で、それは今後のしこりとして残ってしまうからである。

一触即発、張り詰めた空気が酒場内を支配していた。
片や、撤退を提唱するミャジとラズ。
現実的に考えて、たった6人と魔物1体で、終わりが見えないネブドの軍勢全てを相手取るのは不可能だ。だが撤退戦であれば、仮にネブドが発言を翻して襲って来ても、このメンバーなら離脱出来る。

一方徹底抗戦を望むのはヒューザとみなゆり
街を守りたいと言う想いが強い2人は、勝ち筋さえあればそれに頼りたいと言う折れない意志の強さがある。
何よりも、ここでジュレットが落ちれば、ヴェリナードという国は立場上奪還の為の部隊を編成しなければならない。そうなった場合、海底離宮の攻略部隊『本隊』に少なくない影響が出る事は確実だった。

双方に引けない理屈、通したい想いが有る。故にお互いに譲歩は無い。
故に空気は張り詰め、重い沈黙がおりようとしていた。

静観していたアレスは、このままでは不味いと考え、話を動かす為口を開こうとした。

その時である

「トリック!」

底抜けに明るい声で

「オア!」

箒に乗った彼女が

「トリーーーーート!!!」

旅芸人だからでこそ、この空気を変えたのだった。



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