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星辰の羅刹王

ミャジ

[ミャジ]

キャラID
: PH644-410
種 族
: ウェディ
性 別
: 女
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 120

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ミャジの冒険日誌

2020-02-19 17:18:49.0 テーマ:その他

吹雪く桜、逃げる少女~蒼天のソウラ二次創作②~



折角の平穏な時間を邪魔するなよ。
とまあ最初に抱いたのはそんな感情だ。
関わる方が面倒だと感じたアタシは瞳を閉じたまま、夢の世界に逃避する事を決めた・・・が

「うぅ・・・グスッ・・・」

静かなこの場所で、しくしくと泣くその声は一度気にしてしまうと存外耳に付く。
眠る事も出来ずにしばし時間が経過した頃、抑えた声でデーモンロッドが声を掛けて来た。

『おい相棒、助けてやろうぜ。』
「ハア?なんでアタシが見ず知らずの相手を助けなきゃなんないのよ。」

そもそも泣いてる理由も分からないのに。
だが、続く言葉で流石にアタシも跳ね起きた。

『いやあの子の後ろからベロベロが近寄ってるゼ?』
視線を泣く声の方に向ける。高台の下。奥まった所で白い服を着た奴が蹲っている。その背後にはベロベロが足を忍ばせて近付いていた。
一瞬迷ったが、背中の棍に手をかけると、木の上、そして丘の段差と、次々に飛び降りる。

『おお!相棒行くかぁ!』
「流石にコレで無視するのも寝覚が悪いからね。」

羽を目一杯広げて足りない飛距離を確保。よし、これなら届く。
思いきり背をそらし、落下の衝撃諸共ベロベロの間抜け面にデーモンロッドを叩き付ける。
油断なく武器を持ち直し、悶絶するベロベロに向き直る。
突然の乱入者にベロベロは分が悪いと感じたのか、背を向けて一直線に逃走を選択する。
それを見てアタシも武器を背負い直し、一つ息を吐いた。

「大丈夫?一応ここら辺だって魔物が出るんだから気を付けな。」

振り向いて見れば、泣いていたのはアタシと同年代のエルフの少女だった。白く染まった服。頭に乗っていた大きな三角帽子がエルトナ様式の服装にミスマッチで妙に目の付く。
呆けた様にアタシを見つめていたそいつは状況を理解するにつれて段々と顔を朱く染めて行く。

「ご・・・ごめんなさーーーーい!!!」

目尻に涙が溜まり、顔が真っ赤に染まる頃、叫び声と共にそいつは駆け出した。

「ちょ!?ええ!?」

急な出来事の今度はアタシが固まる。見た目とは裏腹の速さで瞬く間にそいつは都の方へ消えて行った。

「・・・何だったんだ?」
『可愛い子だったじゃねーか。ありゃ将来美人に育つゼ。』
「お前本当に俗っぽいな。」

話ながら視線を戻した先で落ちている帽子に気付いた。あの子が慌てて逃げた時に落として行ったのだろう。

『拾っといてやれヨ。置いといたら魔物に盗られるかもダゼ?』
「ん、まあそれ位なら良いけど。」

桜の木を今度は逆によじ登る。やっと手に入れた平穏な場所で、アタシは拾った帽子をアイマスク代わりに眠りにつく。助けた事と落し物の駄賃だ。コレくらいしても許されるだろ。





翌日、今日も今日とて昼寝をしようと同じ場所に向かえば、見覚えの有る白い服の少女が辺りを見回していた。
よほど必死なのか、此方に気付く気配の無いその背中にアタシは声を掛ける。

「探し物はコレか?」
「ピィ!?」

声をかけただけで目に見えて身体が跳ね上がる。近寄り過ぎなくて良かった。これ以上近付いていたら手痛い一撃を貰っていただろう。
固まるソイツの頭の上に帽子を乗せる。サイズが合って無くて、頭から少しずり落ちた。

「あっ・・・ありがとうございます。」
「ん。たまたま拾っただけだから気にしなくて良いよ。」

手を振り欠伸を噛み殺しながら定位置に向かう。これで気兼ね無く昼寝を堪能出来る。

目が覚めると、丁度夕刻。茜色の空に舞う桜が何時もとは違う風情を漂わせる。

「あっ!」
「へ?」

声が聞こえて、上から見下ろせば、そこには件のアイツが立っていた。

「あの・・・帽子、ありがとうございます・・・!」「え、まさかそれ言う為に待ってたの?」

コクリと頷くソイツに驚く。

「あのそれで・・・えっと・・・」

もごもごと怯えとも取れる言葉の続きを待つ。

「ま、またここに来ても・・・良いですか?」

沈黙。予想だにしなかったお願いに、アタシは呆ける事しか出来なかった。

「まあいいんじゃない?別にここはアタシの物じゃない・・・し?」

絞り出したのはそんなありふれた返答。それが正解だったのか、ソイツはパァと顔を輝かせた。

「はい・・・はい!必ずまた来ますね!」
「あ・・・オイ!」

嬉しそうに駆け出そうとしたソイツを引き止める。
キョトンと首を傾げるソイツに、妙な気恥ずかしさを感じて目を逸らしながら言葉を続けた。

「マシロ・・・アタシの名前。」

一拍置いて、嬉しそうにソイツは答えた。

「ユウリです!・・・マシロ・・・さん!」

今度こそ駆け出して夕焼けの王都に向かうユウリの背中をアタシは呆然と見送った。

・・・名前を呼ばれて心臓が跳ねた気がするのは、きっと気のせいだと自分に言い聞かせながら。


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