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星辰の羅刹王

ミャジ

[ミャジ]

キャラID
: PH644-410
種 族
: ウェディ
性 別
: 女
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 120

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ミャジの冒険日誌

2020-02-19 17:28:01.0 テーマ:その他

幸多かれと祈る者~蒼天のソウラ二次創作④~




寒い。
小雨が降るカミハルムイ地方。
アタシはいつもの場所で濡れる事も気にせず膝を抱え蹲っていた。

ヨイの好意で、暫くを過ごせるだけの荷物と路銀だけは用意してもらえた。
本来ならそれを元手に、すぐにでもカミハルムイで冒険者の酒場にでも登録するべきなんだろう。

でも、動く力が湧いて来ない。
アタシは自分で思っていた以上に、育った地を追われたと言う事実に打ち拉がれていた

「マシロさん・・・?」
「ッ!・・・ユウリ。来てたんだ。」
「何かあったんですか・・・?」

いつの間に来ていたのか、唐傘を差すユウリがアタシの顔を覗き込んでいた。
そりゃ、こんな姿を見られればそう聞きたくもなるだろう。

「何でもない。ちょっとゴミが目に入っただけ。」
「そんな泣きそうな顔して何でも無いなんて事は無いですよ!?」
「~ッ!うっさい!何でも無いったら無いんだよ!」
心配してくれるユウリにこんなひどい事言いたくないのに、強がりばかり言ってしまう。

でも、ユウリはアタシの手を掴んだ。

「泣き虫ユウリの癖に、なんでこんな時ばっか強情なのさ・・・」

その手の暖かさに声が震える。

「友達を助けたいと思うのに、理由が必要ですか?」
ユウリの言葉にハッとする。
『友達』
その言葉が暖かくて、雨で冷えた体とアタシの心に内側から熱が広がる。

「アタシ、陰衆の天地雷鳴士だよ?」
「ええ、知ってます。」

「棍なんか使ってるせいで、皆に爪弾きにされてて。」
「マシロさんが何を使おうと、マシロさんの勝手です。」

「その陰衆からも、今日追い出されて。」
「自由に何処にでも行けますね。」

ポツポツと降る雨と共に、今まで語っていなかったアタシの話を打ち明けて行く。

「素直に伝えるのは苦手だし。」
「沢山話して、直して行きましょう。」

肯定するだけじゃ無くて、一緒に解決する方法を考えてくれて。

「頼っても良いの?」
「私も鈍臭いので、一杯頼ります。」

対等な目線で、お互い頼りにし合える。
そんな『友達』

我慢出来なくなって、ユウリに背を向ける。
ずきんを脱ぐ。纏められていた髪が舞い散る桜に負けじと流れ揺れる。
振り返り、ユウリを見つめる。
自分だって、やりたくもない修行や親との関係で大変なのに、アタシの事まで案じてくれる。優しい優しいアタシの『友達』

「・・・で良い。」
「え?」
「友達・・・なら、マシロで良い。呼び方。」

アタシの言葉を理解したユウリは、それはもう嬉しそうに笑った。

「えっとそれじゃあ・・・よろしくねマシロちゃん!」
「~~~~~~~ッ!?」

衝撃。
熱が一気に顔に集まるのを感じる。これはいけない。想像以上の破壊力に口元がニヤけそうになって、必死に耐える。

「どうかしたの?マシロちゃん?」
「ななな、何でもねえよ?ホラ!冒険者の酒場に行かなきゃなんだから、行くぞ!」

荷物を抱えて、逃げる様に、いや実際にユウリから逃げ出す。

「あ、待ってよ~マシロちゃ~ん!」
「お前ホントそう言う所だぞ!?」

カミハルムイに向けて走る。

後ろから感じるユウリの気配と足音に、口元が緩んだ。







ようやく相棒も素直になるって事を覚えたか。
走るマシロの背で、デーモンロッドは安堵の息を吐く。
彼は特別な武器では無い。名も無き幻魔の一体だった。
マシロが夢幻の森に捨てられる刻、彼女の母親は願った。
『どうか、この子に良き人生が、良き友があらん事を』
断腸の決断だった。子を捨てるなど人として決して許されぬ行為。
故に、せめてもの贖罪にと、母は祈りを、父はお守り代わりに自らの獲物を託した。
それが、運命の悪戯を引き寄せる。
夢幻の森の魔力に乗ってその願いは異界まで響いた。訓練された訳でもない、土地の霊力によって不完全に呼び出された幻魔は霧散する筈であった。
しかし幻魔は彼等の願いを叶えるため、近くに有った『器』に繋がる事を選んだ。
即ち、付喪神。彼はそれによって自我と時間を手にする。
天地雷鳴士が呼べる幻魔は原則1人1体。大昔に例外は存在するものの、その原則は揺らがない。マシロが幻魔を召喚出来ない筈である。

『既に彼女は幻魔を引き連れていたのだから』

結局、自分はマシロに大した事は出来なかった。
けれど、彼女は確かに自分の居場所を、頼れる相手を手に入れた。
『だから、俺の役目はここまでダ』
デーモンロッドから薄れる気配。誰に知られる事も無く、名も無き幻魔は異界へ還る。

『頑張れよ。これからも達者でな相棒』

マシロは呼ばれた気がして立ち止まる。しかし、周囲には自分とユウリの2人だけ。

首を傾げた彼女だったが、ユウリと言葉を交わすと、手を繋いで再び歩き出す。

大丈夫。ユウリと一緒なら。

いつしか雨は止んでいた。


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