こちらは、蒼天のソウラの二次創作です。実際の漫画のシナリオ、キャラクターとは相違点や矛盾が有るかも知れませんが、ご理解の上お進み下さい。
使わせていただいた突入部隊の方で、不快感や修正点など有れば直ぐにご連絡下さい。可能な限り早く修正・削除等対応します。
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「いーやーだー!アタシも闘うのー!」
部屋の中に響いたのはそんな子供の様な叫びだった。
イシュナーグ海底離宮。
魔王のお膝元たるこの場所に、冒険者達が打ち建てた大樹の城。
城攻めの緒戦たる築城の為の攻防を終え、一先ずの静寂を得た橋頭堡。
魔女の弟子曰く「えぐみ」
その一室で、黒鎧の戦士『かいり』は鎧を脱がされインナー姿でベットに押さえ付けられていた。
「やっと敵を退けて、これから攻めるんでしょ!?そんな時にこの未来の英雄が居なくてどうするのよー!」
立ち上がろうと力を込める。女性ながら両手剣を軽々振り回す膂力を持つ彼女だったが、込める力にいつもの力強さが欠けている事を押さえ込む『相棒』二人は既に気付いていた。
「バカ言ってんじゃないの!城攻めは主に海上から合流した奴らの仕事!潜水艦で突入したメンバーは先ずは回復だって何回言わせるの!」
何とかベッドに寝かし付けようと奮闘する二人の小さな人影。
その一人、妖精『ぱにゃにゃん』の叱声にかいりは息を詰まらせる。
「うぬぬー!かいりー!今はぱにゃが正しいよー」
その言葉に続き、もう一人の妖精『マユミ』も、かいりを諭す様に言葉を紡ぐ。
一先ずベッドに寝転がされるかいりだったが、その口元は不機嫌な子供の様に曲がり、納得していない事がありありと浮かんでいる。
「だって、途中から来てたのって例の『勇者』ユルールでしょ?」
「聞いた話じゃ今はグランゼドーラの勇者姫と一緒に『盟友』として大魔王と戦ってるらしいわね。」
「そう!勇者と盟友!あたしの憧れと肩を並べて戦えるチャンスなのよ!?それなのにこんな所で寝てるなんて出来ないでしょ!」
再度ベッドから跳ね起きようとしたかいりの気勢を制する様に、その額にマユミとぱにゃにゃんはハリセンを振り下ろす。
「アイター!?」
紙が響かせた乾いた音。
コミカルなその音とは裏腹に、かいりの目の前に浮かぶ妖精二人の表情は真剣そのものだった。
「い・い・か・げ・ん・に・し・て!!」
一言一文字を叩き付ける様に叫ぶぱにゃにゃん。
その剣幕にかいりは眼を見開く。
ぱにゃにゃんとマユミ、二人の瞳が激情に揺れている事に気付いたからだ。
「分かってるの!?アンタさっき死にかけたのよ!?」
決壊した気持ちが叫びとなってぱにゃにゃんの口から溢れる。
「蘇生が間に合ったから良いものの、致命傷だったんだからね!?」
「で、でもこうして助かった訳だし・・・」
「か~い~り~?」
ぱにゃにゃんの叫びにモゴモゴと口答えしたかいりだったが、マユミの視線に気圧され黙る。普段ニコニコ笑っているマユミを知っているからでこそ、その怒りが生半可ではない事が嫌でも伝わる。
「二人の言う通り。丸1日は大人しくしときな。」
ベッドで横になったかいりに、新たな声が掛かる。立っていたのはローズフォームを着こなしチェイサーレザーが女性的なラインを強調するエルフの女性『アヤタチバナ』
「一度魂が身体を離れかける程の傷だ。それに、傷が塞がっていても流れた血は戻ってこないんだから。」
寝転がるかいりを見下ろし、手早く様子を確認したアヤタチバナは一つ頷く。
「血色も良いし、傷が開く様子も無い。しっかり休めば直ぐに良くなるよ。」
その言葉に寄り添う妖精二人の方が大きく安堵の息を吐く。
一方かいりはアヤタチバナが帯剣までしたフル装備である事に関心が向いていた。
「出掛けるの?」
「ああ。ソウラって人が見付かったんだけど、ボロボロだから助けに行ってくれだってさ。」
僧侶づかいが荒いよと言うぼやきを聴きつつ、かいりは自身の預かり知らぬ所で戦端が進んでいる事に歯噛みする。
「改修が終わり次第、本格的に攻略を始めるってさ。」
アヤタチバナの言葉に、かいりは息を詰める。
「そんな顔するぐらいならしっかり休みな。そうすれば、攻略再開までには充分全快出来る。」
それだけ伝えると、アヤタチバナは部屋を後にする。かいりは、詰めていた息を深々と吐き出すと、自分からしっかりと布団を被る。
その様子に、妖精二人はホッと息を吐くと、気付かれない様に部屋を後にした。
「やってやろうじゃない。アタシの伝説はまだ始まったばかりなんだから・・・!」
瞳を閉じる。昂る気持ちと裏腹に、休息を求める身体は静かにかいりを眠りの底へと誘った。
進撃再開まであと48時間・・・