「来たよ来たよ!上がって来たよ!」
「ファーストナンバーはよろしくね『盟友』さん!」
戦場らしくない楽しげな声。
その声に応じたのは、返答代わりの閃光と轟音だった。
「おおお!」
裂帛の気合いと共に振り抜かれた『ギガスラッシュ』が突撃して来たモンスターを紙屑の如く薙ぎ払う。
勢いそのままに返す刃が爆ぜるスパークと共に閃光を描き出し、魔族達の敷設した陣幕を捉えた。
ギガスラッシュX“クロス”
“盟友”ユルールが持つ中でも指折りの破壊力を持つその技が陣幕をばらばらに引き千切る。
切り込んだユルールに続き、冒険者達が次々と戦場へ雪崩れ込んだ。
「いやー本当に凄まじいですね、ユルールさん。」
えぐみの上部、物見櫓の代わりに使われている足の上で桃色の髪の優男『ブラオバウム』は穏やかにつぶやいた。
決して多くない冒険者達で包囲網を食い破っていく。華々しいユルール達の活躍は、冒険者達の本来の目的、『救護班』の存在を覆い隠す。
静かに城から駆け出して行くうりぽ達を見送ると、長い髪を翻し城の中へと戻って行くのだった。
掻き鳴らす様な弦楽器の音色。
暗雲を引き裂く雷鳴の様なそれが戦場に鳴り響く。
弦を張った特別製の『粉砕の大鉈』を振るうExtEの一人『なぎ』
その魂を根底から揺さぶる様なビートに合わせ美しく舞うのは同じくExtEのメンバー達。
揺らめく焔の如き舞踏は、なぎの奏でるビートと共に冒険者達を熱く、強く鼓舞する。
『戦姫の乱れ舞』
「いっけーー!!!」
決めポーズと共に、声高にエールを贈るのは腰のリボンと頬の星マークが印象的なExtEの一人『ゆなな』
エールと同時に、魔物と鍔迫り合いを繰り広げていた冒険者達の武器が、拳が、湧き上がる力で敵を弾き飛ばす。
「飛べる奴らは直接後衛を狙え!正面から抑える事だけに集中するな!」
真正面から斬り拓くその勢いに、堪らずオーガーの1人が檄を飛ばす。
その声に応え、ホークマンがメタッピーの群れを伴いExtEの面々を始めとした後衛の冒険者に突撃を敢行する。
「その素敵な・・・じゃない!厄介な踊りと歌をやめろ!」
本音が漏れ出たホークマンの叫びと共に剣が冒険者を切り裂かんと振り下ろされる。
だが。
「そうは行かないんだよね!」
その突撃が急停止する。
目を回すホークマンは、羽ごと全身を鞭で絡めとられていた。
予想外の状況に目を白黒させるが、彼を捕らえた相手はそれを許す程優しくは無かった。
「戦いは得意じゃないけど~」
鞭。否、彼女からすれば鞭では無く、鞭としても使える『マイク』であろう。
抜群のプロポーションであり、立ち姿の美しさは流石オーガの女性と言うべき舞姫『テルル』は、オーガ元来の膂力に、先の戦姫の乱れ舞で上乗せされた力を込め、身体を捻る。
「アイドルにボディータッチはNGだ・・・ぞ!」
「うわああああああ!?」
しなやかな肉体が生む力に遠心力が加わり、鞭での拘束が解けるや否やその力は余す事なく解放される。
・・・即ち、空へ。
ドーム状に覆われた海底の離宮。『海面に向かって打ち上げられる』と言う希少な体験をしたホークマンは哀れな叫び声と共に、戦場から退場するのだった。
「だが!メタッピーの大群は凌げるものか!」
オーガーの勝ち誇った叫びと共に、丸鋸の如く全身を回転させたメタッピー冒険者達を引き裂こうと飛び込む。
先のホークマンの様に一体ずつ処理したのではとても間に合わないその数に、先頭を駆けていたユルールも思わず振り返る。
「とっころがそうは!」
「行かないよ・・・」
声と共に一機、また一機とメタッピーが堕ちる。
舞い踊る様に幾重にも疾る剣筋が的確に翼を切り裂き、次の敵へと閃く。
流麗かつ的確な太刀筋と、力強くかつ何処か奔放な太刀筋。
DWK48からやって来た『むー』と『ユイリィア』二人の息の合った『つるぎの舞』鋭くも華々しい舞が味方を鼓舞し、敵を慄かせる。
「まだだ!」
叫びと共にメタッピーが白熱し、急速に魔力が高まる。それは、命すら魔力に変え爆ぜる『自爆呪文“メガンテ”』の輝き。
「吹き飛・・・べ!?」
だが、その命を散らす花火は白煙を少し上げ止まってしまう。
「ステージではお静かに!じゃないと~・・・悪戯しちゃうぞ!」
口元に立てた指を当て、『封印のダンス』を決める。愛らしい見た目とは裏腹の悪戯娘の様な笑顔。小さな王冠が可愛らしいExtEの『いろりん』
「まだまだ盛り上げていくよ!」
小さな身体から放たれる活力に満ちた言葉。
その言葉に引っ張られる様に、冒険者達は更に一歩踏み出す。
「ExtEファイトー!」
「「「「「「オー!!!」」」」」」
進撃再開まで、後42時間・・・