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星辰の羅刹王

ミャジ

[ミャジ]

キャラID
: PH644-410
種 族
: ウェディ
性 別
: 女
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 120

ライブカメラ画像

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ミャジの冒険日誌

2020-11-10 12:09:34.0 テーマ:その他

闇鍋大会をしよう!【ニ杯目】~プチうちよそ企画~




(マズイマズイマズイマズイ!!!)

黒いエルトナ様式の装束を纏ったエルフの少女『マシロ』は全力で焦っていた。
表面上は冷静を取り繕い、必死に、かつ自らの持てる最速で手を動かす。

「ま、マシロちゃん?そんなに慌てても鍋は逃げないよ?」

こちらを慮るマシロの友人『ユウリ』の言葉が今は逆に辛い。
鍋は逃げないだろう。

だがこのままだと鍋の海に逃げるのだ。

私の持ち込んだ“たいやき”が!!



ーーー闇鍋大会をしよう!【2杯目】ーーー


参加メンバー&持ち込み食材

マシロ“たいやき”
ユウリ“ネギ”
ウェルデ“白菜”
アレス“大トロの切り身”
ロヒモト“カチカチくるみ”







「タダ飯なんだから、沢山食わないと損だよ?」

そうやって表情と言葉を取り繕いながら必死に回収した成果か。大部分は回収出来た。多少スープに餡子が溶け出してしまったかもしれないが、それはもはやどうしようも無い。
そもそも、鍋がこう言う煮込み料理だと知っていればたいやきなど持ち込まなかったのに。後の祭りとは言え、自分の迂闊さを内心恨む。

「おや?これは何でしょうか・・・」

そうマシロが安心しかけたタイミングで、同じ席に座った人間の少女、ヴェリナードで王立調査員を務めていると言う『ウェルデ』は、箸で器用に摘んだそれを不思議そうに見詰め疑問の言葉を吐く。
汁気を吸って膨らんではいるものの、それは間違いなくマシロが持ち込んだたいやきの一部であった。

しまった、取りこぼしが有ったか。一瞬そう悔やむが、それよりも問題はウェルデの手にあるたいやきだ。僅かに躊躇したものの、半ば反射でマシロは行動を起こした。

どんな行動を。そう問われればこう答えるべきだろう。

咄嗟にマシロはウェルデの箸に乗った具材を口にした。

「キャッ!?」

突然自らの箸に口付けると言う行動に、思わずウェルデは悲鳴を上げる。
それは、流石に同卓の冒険者も予想外だったのか。ユウリを始め他の面々も目を丸くする。




咄嗟に出た行動だったが、どう弁明するべきか。いや、そも完全な現行犯で弁明など叶うのだろうか。
ダラダラと冷や汗をかきながら、ゆっくり乗り出していた体を自らの座席へと戻す。
ゆっくり、ゆっくりと咀嚼する事でどうにか考える時間を稼ぐが、一向にいい考えが浮かばない。
と言うか、口の中の物が普通に不味い。
しょっぱい出汁の味の奥から湧き上がる濃厚な生地と餡子の甘味が言葉にし難い不味さで思考を阻害して来ていた。

こくり

喉を鳴らしてどうにかそれを飲み下す。
そうしてどうにか絞り出したのは。

「美味しそうでつい・・・?」

そんな当たり障りのない逃げ文句であった。
静かになる卓上で、視線がマシロへと集中する。
居たたまれなさと恥ずかしさ、そして口の中に微妙に残った後味。色々な物が正に闇鍋となってマシロの中を渦巻く。

真っ赤になって俯いてしまったマシロの肩を優しく叩く手が有った。
マシロが視線を上げれば、同卓に座った冒険者の一人。エルフの男性『アレス』が穏やかに微笑んで器を差し出していた。
もしや、不味いと思っていた事が顔に出てしまったか。

このままでは何を持ち込んだか追求されてしまう!

そんなマシロの危惧とは裏腹に、アレスの口から出たのはとても優しそうな声であった。


「・・・すまない、そんなにお腹が空いていたとは・・・良ければこれも食べないか?」

(違うわコレただの食いしん坊だと思われてる奴だ!)
思わず頭を抱える。
私の机のメンバー、優しすぎやしないだろうか?
アレスの表情や声色から、本気で申し訳ないと思っている事が伝わって来る。
友人であるユウリに始まり、このアレスも、そして最初は巻き込まれたと唸っていたウェルデの方も気付いてこそ居そうな様子だが、マシロが変な物を持ち込んだと追求する様子はない。

(待て待て、最後の一人がめっちゃ怒ってる可能性も有るだろ!?)

妙な方向に期待を持ちマシロは勢いよく頭を上げる。


スカーーーーーーンッ!!!



鮮烈な音と共に、腕が振り下ろされる。
音の割に小さな振動が机を走り、男の目前に置かれていた『カチカチくるみ』が見事に両断される。
おもむろに外殻とくるみの実を分けると、再び自分の器から新たなくるみを取り出し同じ場所へと配置する。

スコーーーーーーンッ!!!!

先程と寸分違わぬ一閃が再び振り下ろされる。
まるで機械のように。否、まさしく機械の如きその男。見た目はドワーフの男である『ロヒモト』
気が付けば光の消えた瞳で繰り返されるその動きを眺めていたマシロは、深呼吸すると、ゆっくり天井を仰いだ。


「ツッコミがいねぇ・・・」


哀愁漂う呟きが、鍋の煙と共に天井へと消えて行くのだった。





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