あやねの冒険日誌

ドラゴンクエストという物語はプレイヤーが主人公です。
この度、映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」を鑑賞してきました。サブタイトルの日本語訳は「あなたの物語」。このことから、原作のドラクエ５を軸にプレイヤーに何かを訴える内容になると予想していました。

まず、主人公ですが、青年時代序盤にてパパスから自らの使命を日記を通じて伝えられた直後の彼の臆病と愚痴は実に現実世界の人間らしく思えました。ドラクエの主人公は現実世界を生きる自分なわけですが、熊を目の前にして怖じ恐る私たちが、熊より強いモンスターの軍勢を相手にする使命をいきなり突き付けられたら、「無理」と思うのは当然です。それなのに、愚痴を言いながらも旅立った主人公は凄いです。
また、ヘンリーに対する言葉遣いが丁寧語なのには驚きました。四コママンガや小説などでは対等な友人同士のように描写されていましたが、そもそもは自分がグランバニア王家の関係者だと分かる以前は見かけ上立場が違うのだから、丁寧語になるのはごく自然と納得させられました。

フローラは原作らしくないなと思いました。あまりに現実世界にいる女性と同じような振る舞い方です。私個人の意見だとフローラは「わざとらしい天然キャラ」です。実際にゲームにて結婚相手をフローラにすると、まるで倦怠期の男が女はこうだといいのにをわざとらしく大げさに表現しつつも、世間知らずゆえの天然な性格で会話成立が困難な、現実世界にいたら関わるのがむしろ大変な女性です。あまりのわざとらしさから、ドラクエ５を始めてから最初何も知らないときは主人公を色気で騙す魔物が化けているのかとさえ実はフローラのことを思っていました(笑)

ゲマは相変わらず目立ち過ぎです。悪役はあれくらい印象に残るように立ち振る舞わないと、主役が引き立たないのかもしれませんが。
今回のゲマは最後の敵の作戦で設定以上の実力を得ることになりましたが、それが見る側に「どうやって勝つのだろう？」と期待を寄せる感じでした。ゲマは幽鬼と化した暗黒魔導士という設定がありますが、それらしく映画内での動き方は現実世界のどの生物にも不可能に思えるものになっていて、実にモンスターらしさが出ていました。ビアンカとの一対一の対決時に放った「格が違うのですよ。諦めなさい！」というセリフは原作にはないものですが、ゲマの恐ろしさをより引き立てる印象があり、記憶に残りました。

議論の的になっている最終ボス。ミルドラースに擬態したコンピュータウィルスというわけで、それまでドラゴンクエストという虚構の世界にて愉悦に浸っていた観衆を一気に現実に引き戻します。ドラクエ嫌いな１人の者が送り込んだウィルスということで、虚構から抜け出し大人になれと主人公を諭します。
ところで「大人」とは何なのでしょうか？「大人になれ」みたいなことを言う人は多くいますし、私にそう言ってきた者もいましたが、柔軟性を欠き固定観念に捉われていて、常識に疑問を抱かずにそれに従うだけです。
そうした常識で成立したこの世の中を自称大人にこそ見てほしいと私は訴えたい。もしその常識が本当に正しいのであれば、現在生じている諸問題は発生するはずがないのです。
逆に自分を「子供」だと言う人はかえって態度が謙虚な印象があります。そうした人は自分の欠点などを素直に認め、問題を解決させるために自らを磨くことに余念がないように私の目には写ります。
そもそも常識というものは時代によって変化します。そんな不確かなものに固執して偏見で判断する人はその生き方の果てに一体何を得るのか私には分かりません。「大人になれ」というセリフは本来は「謙虚に生きよ」という意味で使われるべきだと私は思います。ちなみに、ミルドラースに擬態したウィルスを作ったハッカーは威力業務妨害と不正指令電磁的記録の罪に問われます。大人ではないですね。

そして、このウィルスに対するワクチンの役割を果たしたのがスラりんでした。スラりんの声優さんは某アニメの破壊神と同じキャラと同じです。私は前に破壊神の付き人のガイド天使風のドレスアップをした際、破壊神をスライムの姿にした日誌を書きましたが、スラりんの声優を知ったときにその日誌が思い起こされて嬉しかったです。

最後、ドラクエ嫌いな人物の作ったウィルスがスラりんの助力による主人公の一撃で消滅したときは「ドラゴンクエスト」そのものが守られたという安堵感を私は感じました。数々の思い出と共に現実世界へのアクセント、そして私個人としては一種のアイデンティティのようなものを与えてくれた「ドラゴンクエスト」に感謝し、今後の発展を願います。そして、ファンの立場として前々から掲げる「理想のドラクエ」実現のために日々の生活を悔いなく生きたいものです。