あおしんの冒険日誌

夜の荒野をひとり
馬を駆けさせ街へと急ぐ

一大事、一刻も早く街へ
だが慌ててはいけない
まだ慌てるような時間ではない
馬に焦りを感じさぬよう
慎重かつ速やかに
駒を進める ようやく街が見えた
もうすぐだ　あと少し
俺はサブリーダーあおしん
ここで失態を晒す訳にはいかない

11月5日土曜　21時
ビーグル商会年次集会

その日その時までは皆の憧れで
居続けなければならない 酒場のスイングドアを抜ける
「いらっしゃい」
顔も見ずに無愛想なやつだ

ここは落ち着いてゆっくりと
「先に借りるぜ」
「右奥です」
きっと奴には
俺が切羽詰まっていることに
気づいていないだろう

俺は悠然と向かう
ここまで来れば大丈夫だ
心にも余裕が出てきた
うん、あと五分はいける

ノブを確認
カギの表示は？
青だ
空室だ
よし

その瞬間
（ピーン）
頭の中でブザーが鳴り
カウントダウンがはじまる まだ余裕があったはずだが
近い未来が見えた刹那
俺の心は限界を決めた

だが俺はあせらない
徐に戸を開ける
U字シートよし
ペーパーよし
冷静だ　俺はいつになく冷静だ
すべての不安要素はなくなった
カウントダウンにも間に合うぞ

そう思った直後だった‥



しまった！！！！ 今日に限って
ジーンズがファスナーではなく
ボタンでとめるやつだった！
まずい！カウントはとまらない！！
急げ！急ぐのだ！！
固い、固いぞこのボタン！

（カチッカチッ　ポーン）