ここは、とある深い深ぁ~い森の
そのまた奥にある秘密の場所。
地図にも描かれず、人の噂にもほとんど上らない。
けれど、この世界でたった一つだけ――
河童と魔物が、肩を並べて暮らす場所がある...。
森を包む霧はやわらかく、夜になると青白い光を帯びて揺れる。
その光は、迷い人を拒む結界であると同時に、
心優しき者だけをそっと導く道しるべでもあった。
この地に足を踏み入れられるのは、
河童とも魔物とも心を通わせることができる...特別な人だけ。
心の中に澄んだ水のような静けさと、
焚き火のようなあたたかさを持つ者にだけ、道はひらかれる。

聖地の中心には、鏡のように透き通った湖がある。
湖面には夜ごと、星空が落ちてきたかのように光が散りばめられ、
そのほとりで河童たちは水皿を冷やし、
魔物たちは月明かりを浴びてうたた寝をする。
ここでは争いも怒りも、すべて湖に溶けてしまう。
風が運ぶのは笑い声で、木々が揺れるのは挨拶のよう。
訪れた者は口をそろえて言うという。

「あそこはね……心が帰る場所なんだよ」
そして今日もひっそりと、
聖地の門は閉ざされている。
次にそこへ辿り着くのは――
もしかすると、あなたのように優しい心を持つ誰かかもしれない。

めでたし...めでたし。