夕暮れの森で、アルは高らかにきゅうりを掲げた。 沈みかけの太陽が、その緑をいっそう鮮やかに染める
「見よ!本日の戦利品!」
胸いっぱいの誇らしさ。
風がくすぐり、葉がささやく。
アルエールはくすりと笑い、カメラを構えて片目を閉じた。
「それ、トロフィー?それとも森からの贈りもの?」
アルは一瞬、きゅうりを見つめる。 少し曲がって、土の名残をまとったその一本。
そして、空へ掲げ直した。
「明日を照らしだす、私たちの希望だよ!」
ぱしゃり。
写ったのは、黄金色にとろける夕焼けのなか、
世界を救ったみたいな顔で立つアル。
少し曲がったその一本は、不格好なのに堂々としていて、 まるで“今日をやりきった証”みたいに光っていた。

帰り道。
少し赤くなった空の下。
ふたりは腰をおろし、
きゅうりを半分こにする。
しゃくり。
森の静けさに、みずみずしい音が弾ける。
疲れも悩みも、その一口でほどけていく。
その日いちばん輝いていたのは、
燃えるような夕焼けでも、 高性能なカメラでもない
きゅうりを掲げるアルのまっすぐな心と、
それを写そうとするアルエールのやさしいまなざし。
そして、半分こにしたその時間だった。
森はそっと
ふたりの背中を金色に染め続けていた。