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蒼鎧両断の緑の者

アル

[アル]

キャラID
: CS433-198
種 族
: ドワーフ
性 別
: 女
職 業
: レンジャー
レベル
: 138

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アルの冒険日誌

2026-03-01 11:55:54.0 2026-03-01 18:09:34.0テーマ:写真活動

灯晶の書庫「声にならない手紙」

森の奥。

赤い灯晶は、今夜もやわらかく脈打っている。


書庫は息をしている。

けれどその呼吸は、どこか浅い。


緑の髪の司書は、いつもの椅子に腰かけ、本をひらく

ページは白い。

そして、ゆっくりと文字が滲み出す。



「だいじょうぶ」

「ちゃんと笑えてる」

「まだ平気」



──次の瞬間。



文字が、崩れた。 インクが水に落ちたように、輪郭を失い、にじみ、絡まり合う。

読めない。

言葉なのに、言葉になっていない。


司書はまばたきをする。


もう一度、目を凝らす。

だがそこにあるのは、意味ではなく“揺れ”だった。

胸の奥で形を持たない感情。

怒りでも、悲しみでも、寂しさでもない。

名前をまだ与えられていないもの。



それは、“自分でも分かっていない感情”。



灯晶が、不安そうに揺れる。


司書は、そっとページに触れた。

すると指先が、かすかに震えた。



……冷たい。 これまで司書は、読むことができた。

どんな痛みも、どんな言い訳も、どんな強がりも。


けれど今夜は違う。


文字がほどけない。

光に変わらない。

ただ、重たく、沈んでいる。



司書は初めて、本を閉じようとした。



閉じられない。

本が、拒んでいるのではない。


“まだ読まれていない”と、知っているからだ。


読むだけでは、足りない夜。


司書は椅子から立ち上がる。



静かな書庫の奥へ、歩く。

赤い灯晶のひとつに、そっと額を寄せた。



「……教えて」



声に出すのは、初めてだった。

その瞬間、乱れていた文字が、ほんのわずかに形を持つ。


『わからない』


それだけ。 怒りでもない。

悲しみでもない。


ただ、“わからない”。


どうして苦しいのか。

どうして涙が出そうなのか。

何が欲しいのか。



わからない。



司書は、本を抱きしめる。

読むのではなく、抱く。


灯晶が強く揺れた。

揺れはやがて、あたたかな波になる。


読めなかった文字が、ひとつずつ、音を持ちはじめる

言葉ではない。

けれど、鼓動のようなもの。



司書は気づく。


名前がなくてもいい。

理解できなくてもいい。

まずは、そこにあると認めること。



それが、最初の灯り。 やがて、ページのにじみは消えないまま、淡く光を帯びる。


星にはならない。

今夜はまだ、星にはならない。


けれど書庫の天井に、小さな赤い光が残る。


未完成の灯り。



それでいい。



読むことは、救うこと。

けれど、寄り添うことは、もっと深い。

声にならない手紙は、まだ途中だ。

だから本は閉じない。



今夜、きみが理由もなく息苦しくなったなら、

それは壊れているからじゃない。



ただ、まだ名前がついていないだけ。


森の奥で、司書は待っている。


読むだけでは足りない夜もあると、

知ったから。


そして書庫は、今夜は閉じない。

次に浮かぶ一文字を、

一緒に待つために。
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