| 街路樹の葉も散り始め、街行く人もマフラー巻きの人が増えてきました。 そんな日増しに冬の気配が濃くなる今日この頃、アストルティアを旅する冒険者の皆さんは、いかがお過ごしでしょうか。
こんにちは、ドラゴンクエストX ディレクターの藤澤です。 |
さて、第3回を迎えた「開発・運営だより」ですが、今回のテーマは前号の文末で予告した通り、「ドラゴンクエストXの中長期的な展望について」をお話ししたいと思います。
と思ったのですが、アストルティアの誕生から3ヶ月半が過ぎて、「もっとゲーム内容のことを話してほしい」という声も増えてきました。
なので、今回は「秋の夜長のディレクター夜話」という体で、「中長期的な展望」だけでなく、プレイヤーの皆さんが今気にされているであろうことを中心に、自分の考えを色々とお話ししていこうと思います。
話が散漫にならないように、話すテーマは先に掲げておきます。
こんな感じでいきましょうかね。
ちょっと長くなりそうです。
冒険の合間にでも、すこしずつ読んでいただければ幸いです。
提案広場にいただくご意見について
「目覚めし冒険者の広場」の提案広場ですが、毎日たくさんのご意見をいただきありがとうございます。
読んでもらえてないんじゃーと不安に思われる方もいると思いますが、ご意見はすべて運営スタッフが目を通し、有用なご提案は開発スタッフに伝えられ、実際に多くの案件が改善対象として採用されています。
いくつか例を挙げるとすれば……
■100匹達成チャイムがあるといいな
https://hiroba.dqx.jp/sc/forum/pastthread/29599/これは先日の緊急パッチで対応が完了したものですが、ピックアップ掲示板でさらに多くの方にご意見を募ったことから討伐モンスターリストの改善案などもいただき、そちらも【バージョン1.2】までに対応できそうな状況です。
■返事がない・・・ただのしかばねのようだ
https://hiroba.dqx.jp/sc/forum/pastthread/36763/■ドアベルがほしい
https://hiroba.dqx.jp/sc/forum/pastthread/43890/これらは藤澤に気づきを与えてくれたありがたいご提案で、読んだ瞬間「あー、ホントだな」と呟いてしまいました。いずれも【バージョン1.2】での実現を予定しています。
上記以外にも、いただいたご提案による改善点は、現在制作中の【バージョン1.2】にたくさん含まれています。
こういうかたちで、プレイヤーの皆さんのリアルタイムな声から実際にゲームが改善されていく流れができているわけで、提案広場は有効活用されていると藤澤は認識しています。
ですが、投稿した提案に開発・運営からのリアクションがないとご不満の声をいただくことも少なくありません。
これに関しては、今後もなるべく返答していきたいと思いますが、すべてのご意見に返答することは現実的に難しいという点については、ご理解をいただきたく思います。
また、「ピックアップ掲示板」に採用される基準を知りたいという方もいらっしゃいますが、提案広場はプレイヤーの皆さんから提案をいただく場であり、議論をする場ではないという運営方針としています。
そのため、皆さんの関心の高さを基準にしているのではなく、開発が実装を検討しており、より多くの皆さんからご意見を求めたい件のみをピックアップしています。
これと同じ理由から、ゲームバランスについての感想は、感じ方に個人差が大きく議論に発展しやすいため、いただいたご意見は開発の参考にさせていただきますが、回答やピックアップをすることは原則的にありません。
上記の運営方針について、何卒ご理解をお願いいたします。
また、「ドラゴンクエストX おうえん」のテーマにいただける、実際に皆さんが楽しく遊んでいるご報告などは、開発・運営スタッフ一同、とても元気をいただけています。
応援されたときの返事は、もちろん「ありがとう!」で。
ディレクターの現状認識
先日、「ドラゴンクエストXアンケート」を実施しました。
アンケートにお答えいただいた79,205名のプレイヤーの皆さん、本当にありがとうございました。
アンケート結果は開発の参考にさせていただく趣旨のもので結果の公開予定はありませんでしたが、自分の現状認識をお伝えする上でも皆さんに公開した方がよいと判断しましたので、今回に限り満足度の項目の結果を公開いたします。
この結果を良いと取るか悪いと取るかは人によって異なると思いますが、藤澤個人としては、特にスタートが難しいオンラインゲームの最初の評価としては、とても高い評価をいただけたと感じています。
「ゲーム全体の満足度」以上に「遊び続けたい」と思ってくれた方が多かったのは、「これからもがんばれ」と言われたようで、身の引き締まる思いがしました。
では次に、実際のゲームデータから、現状を分析してみたいと思います。
こちらも非公開データですが、現在エンディングを目指してプレイしている途中のプレイヤーは、全体の75%です。これは、ほぼ自分の予想通りの比率となっています。
すでにエンディングを迎えた進行状況が速いプレイヤーは、全体の25%。
このプレイヤー層の方からは「早く新しいコンテンツがほしい」という声が高まっています。
進行が速いプレイヤーは特に熱心に遊んでいる皆さんということであり、自分としても大切にしたいご意見と思っています。
また、さらに一方では、「ゲームが上級者向けになっていないか」「もっと初心者向けのコンテンツを充実させるべきではないか」というご意見をいただくことも稀ではありません。
これらのご意見は、どれかが真実でどれかが間違い、というような性質のものではなく、すべて真実を伝える声として受け止めています。
こういう状況にあって、限られた開発資源をどう分配するかは非常に難しい判断ですが、藤澤は現在のところ「すべてのプレイヤー層を均等に重視する」方針としています。
「選択と集中」や「一点突破」はビジネスセオリーかも知れませんが、特定のプレイヤー層に重点を置くのはまだ早すぎる、というのが、ディレクターとしての藤澤の判断です。
【バージョン1.1】の開発終了後、自分から全スタッフに今後の方針についての説明会を行いました。
それぞれの進行速度のプレイヤーにどういうコンテンツを作っていくかという認識を全スタッフと共有して、【バージョン1.2】開発はスタートしました。
【バージョン1.1】までに得られた反省点や改善点がたくさん活かされています。
藤澤も毎日ワクワクしながら開発に臨んでいますので、ぜひ【バージョン1.2】の内容にご期待いただければと思います。
バトルバランスについての見解
先述の通り、バトルバランスについては感じ方に個人差が大きいところです。
誰もが納得する見解にはならないと思いますが、藤澤自身は、現在のバトルバランスは全体的に良好な状態にある、と認識しています。
【バージョン1.1】の時点で問題視していた狩り場の集中については、格下の狩り場に高レベルプレイヤーが滞留してしまう現象がほぼ解消されました。
現在も人口の多いレベル帯の狩り場がピークタイムに混雑することはありますが、これは物理的に自然な現象で、バランス上の問題と認識していません。
プレイヤーとモンスターの強さのバランスについても、【バージョン1.1】での調整が効果的に機能したと認識しています。
そのため、【バージョン1.2】では今のところ大きなバランス調整をする予定はなく、一部、もっと使いやすくてもよいと思う特技について改善を検討している程度です。
もっとはっきり言えば、「魔力かくせい」の弱体化の予定はありません。
提案広場では、「職業格差」と「パッシブ」(※スキルで得られる「こうげき力+5」などのパラメータアップ系効果のこと)について、頻繁にご意見をいただきます。
「職業格差」とは、分解すれば「パーティ内での貢献度の差」と、それに伴う「パーティに加えてもらえる頻度の差」ということになるかと思います。
「パーティ内での貢献度の差」については、プレイヤー側データは開発側のほぼ想定通りの状況です。
問題に感じる人が多いのは、現時点で、ある特定の職業が貢献しやすいボスが多いことに起因するものと考えています。
これはプレイヤー側データの問題ではなくモンスター側データの問題と捉えており、今後は様々な職業が貢献できるボスを増やしていきたいと思っています。
これと似た対応として、レベル35以降の通常モンスターについて、守備力を多少下げ、HPを多少上げることで、相対的に打撃系職業の貢献度を高める調整を予定しています。
「パーティに加えてもらえる頻度の差」については、上記の貢献度の偏りが一つの原因と推測されますが、強ボス戦のようなレアアイテム狙いの状況において盗賊が必要とされやすく他の前衛職業の入る余地がない、という現象が主な原因と認識しています。
こちらも職業バランスの問題ではなく仕様上の問題と捉えており、強ボス戦での報酬となるオーブについては、モンスターが落とすのではなく「討伐報酬」という形に変え、職業に関わらず確率で入手できるように検討しています。
「パッシブ」の問題とは、「効果が強力で職業間の差が出づらい」ということで、このご意見は、とてもよく理解できます。
自分としても、職業色をどの程度出すべきかについてはずいぶん悩んだところです。
ですが、充分に熟考した上で、現仕様を採用しました。
確かに「パッシブを抑え目にする=職業間の差を強調する」ということになりますが、一方で1キャラをひたすら強くしていく余地は失われます。
藤澤の考えるドラゴンクエストの転職の面白さは、「転職を繰り返すことで強くなっていく」という点にあると思っています。
このコンセプトは、20年以上前の「Ⅲ転職システム」も、「Ⅵ・Ⅶ転職システム」も、「Ⅸ・Ⅹ転職システム」でも、一貫して同じです。
長時間プレイできるプレイヤーが優遇されるというご意見や、個人個人の好みもあると思いますが、「ドラゴンクエストX」という一本のゲームとして、現仕様がもっともふさわしい転職システムと判断した上で採用しました。
職業の特色も大切だと思っていますが、それはパッシブなどに影響されるパラメータだけで表されるものではなく、装備、特技などを含めた全体として表現していきたいと考えています。
すこし休憩……
さて……、すでにずいぶん長くなりました。
ここらでちょっと飲み物を取りに行っていただくなど、休憩を挟みながら読んでいただければと思います。
というわけで、アタマも疲れてきたので、「Liveアストルティア」の番外編でもやりましょうか。
では、「細かすぎて伝わらない地味な修正点紹介コーナー」の【バージョン1.2】編を少しだけ(笑)
【バージョン1.2】では、年末年始にコタツに入りながら「討伐モンスターリスト」を見てニヤニヤする時間を増やしたいと思ったので、この辺りの表現に色々と追加しています。
まずは現在求められている声が多い、こちらの修正。
討伐モンスターリストのカテゴリーに「今いるマップを見る」を追加しました。
これは100匹討伐時に役立つだけでなく、エリア探索をする上でもなかなか使える機能になると思います。
では、ひとつ奥の階層に入りまして。
こちらはモンスターリストの部分ですが、2点変わっています。
ひとつは、盗賊のおたからスキルの「みやぶる」を使ったモンスターの名前が黄色で表示されるようになりました。
もうひとつは、どのモンスターが100体討伐の対象外なのかがわからない、という声があったので、100体討伐の対象のモンスターは、アイコンが表示される以前はメダルが嵌る窪みを表示するようにしました。
では、ラストです。さらに奥の階層へ。
さて、この画面はどこが変わったでしょうか。
正解は、ナスビナーラが変なポーズをしていることではありません。
窪みや名前が黄色なのは前項のリストと同じですが、それ以外に一か所変わったところがあります。
正解は、【バージョン1.2】での「そうび」画面同様、モンスターの表示位置の羊皮紙に色褪せが入った、です。
はい、地味ですね。
こんな地味な修正もたくさん入っていますが、もちろん地味じゃない大きなコンテンツ追加もたくさんやっていますので、そちらも楽しみにお待ちください(笑)
さて、そろそろ休憩は終わりにして、本題に戻りましょうか。
ドラゴンクエストXの中長期的な展望について
というわけで、ようやく本題です。
現在予定している「ドラゴンクエストXの中長期的な展望」をご覧いただきたいと思います。
見ていただく上で、いくつかの注意点はあるのですが、それは後述します。
※クリックすると大きい画像が表示されます。
この表は、開発内で共有している今後の開発予定表を、皆さんにお見せする用にシンプルにまとめ直したものです。
お断りですが、実際の開発の場面では、その時のプレイヤーの皆さんが求める機能の実現を優先するために、開発時期の入れ替えをすることがあります。
項目の中に(予定)と書いてある項目や文字色の薄い項目については、特に実装時期が変更となる可能性が高いものですのでご了承ください。
さて、では内容について解説いたします。
開発としては、重視すべきテーマとして以下を掲げており、それぞれの今後の予定について示しています。
・ストーリー系コンテンツ
・バトル系コンテンツ
・生活系コンテンツ
・住宅村
・コミュニティ関連機能
・キャラ個性化機能
・使いやすさ向上
ドラゴンクエストXは、まだサービス開始から時間が浅く、コンテンツ追加や機能改善が活発に行われるべき時期です。
実際には、もっと多くのコンテンツ追加、機能改善が予定に組み込まれていますが、今回見ていただいた表は全体をシンプルにしているため、細かい点は省略しています。
(省略部分についてもう少し補足すると、開発が重視するテーマにはもうひとつ「初心者向けコンテンツ」もあります)
また、「中長期的展望」の期間は【バージョン1.5】までとしています。
あくまでも現状の予定ですが、1stフェーズは【バージョン1.5】で終了し、以降2ndフェーズ、つまり【バージョン2.0】へと移行していきます。
表にある通り、「カジノ」や「釣り」、「調理などの新職人」は【バージョン2.0】以降での実装を予定しています。
それぞれ施設の建物がある状態で、早期の実装を期待されていた方もいらっしゃると思いますが、こちらは上記の予定であることをご了承願います。
アップデートで実装する機能は、すべて完璧な予定を立てて、その通りに遂行していくのではありません。
そういうやり方は、先の見通しを立てやすいメリットはありますが、一方で柔軟性を損ない今遊んでいる人が望む機能を実現できなくなるというデメリットが生じます。
なので、開発内で自分が出している方針は、「予定通りの進行が50%、即興の進行が50%」としています。
締め切りが迫るほど、「即興」の割合は小さくなり、最終的に「予定」に組み込まれる割合が100%となります。
現在は【バージョン1.2】の「予定」が100%となっており、この100%を漏らさず実装できるよう、各スタッフが連日ギリギリまでがんばっています!
【バージョン1.2】以降の「予定」化も進んでおり、【バージョン1.3】でおよそ70%程度、【バージョン1.4】でおよそ60%程度の項目が「予定」化されています。
表を見ていただくとわかると思いますが、後半になるほど項目に隙間が多いのは、まだ「即興」の占める割合、つまりプレイヤーの皆さんの声にお応えできる余地が大きい、ということを示しています。
表の中で赤字にしている項目は、現在開発が特に力を入れているコンテンツです。
一般にエンドコンテンツと呼ばれるずっと遊べる要素や、みなさんのモチベーションを維持するために必要と考えている要素です。
その中の一つ、「繰り返しダンジョン攻略」が、【バージョン1.2】にてようやく皆さんにお届けできそうです。
こちらは、繰り返し遊べるダンジョン攻略系のエンドコンテンツとなります。
また、こちらは念のためですが、時々「すでに完成している物を少しずつ公開してるのでは?」という声をいただくことがあります。
自信を持ってこう言うのも微妙な気分ですが、ここに書かれている機能は、本当にまだできていません。
定期的に配信しているクエストでさえ、順次開発を続行中のものです。
決して出し惜しみをしているようなことはなく、各スタッフは予定のコンテンツの完成を目指して現在も毎日がんばっています。
本当はそれぞれの項目について、もっと詳しくお話ししたいのですが、これ以上の詳細な説明は、それぞれのバージョン公開時に順次やっていきたいと思います。
それまでは、この表の記述から予想される内容について、色々と想像を巡らせながらお待ちいただければと思います。
おわりに
すでに10年以上も先行するゲームが複数ある中で、オンラインゲームの新規参入はとても難しい状況にあります。
そういう中で、まだ3ヶ月半とはいえ、ドラゴンクエストXがこうして無事に船出ができたのは、今アストルティアを旅している数多くの冒険者の皆さんのおかげと思っております。
今回のドラゴンクエストXは、シリーズで初めてのオンラインゲームです。
変化に戸惑われて遊ぶことを躊躇される方が多い中で、実際にゲームを手にとり、こうしてアストルティアまで来てくださった皆さんは、私たちにとっては本当にかけがえのない存在です。
日々の運営の中で、私たちの皆さんへの対応が充分でないと感じられる日があると思います。
ゲームの今後について見解の相違が生じ、不信感を抱かれる日もあると思います。
私たちの力が至らない部分については、素直にお詫びを申し上げます。
ですが、何度でも繰り返しお伝えしたいのは、私たち開発・運営スタッフは皆さんに心から感謝しており、皆さんに喜んでいただきたいという気持ちを胸に、毎日ゲーム作りと向き合っているということです。
この一点だけは、どうか信用していただければと思います。
さて、今回の「開発・運営だより」は、充分に時間をかけて、自分の考えを色々と書きました。
言葉を尽くした分だけ、また多くの異論を生んだ部分もあると思いますが、まずは今の自分の考えをお伝えすることが大切だと考え、努めて正直な気持ちを記したつもりです。
今回の「開発・運営だより」が、少しでも皆さんの「今」の疑問を消してくれることを願いつつ、第3号もそろそろおしまいにしようと思います。
長い長いお便りに、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
では、今後もドラゴンクエストXをよろしくお願いします。
(あ、今回は写真を撮るの忘れてました)
2012/11/20 ドラゴンクエストX ディレクター 藤澤