早いもので、DQXのプロジェクトに携わってから十数年が経ちました。
一番最初に「挑戦してみて貰えないか?」というオファーを貰った時点からの計算ですし、無謀な話で最初は自分とプロジェクトアシスタントの2名しかいない状態からのスタートだったので、実開発に着手してからという話ではありません。
(あまりにも具体的な年数をいうと会社に怒られるかもしれないのでこのくらいの書き方にしておきます(笑) とはいえ、かなりの年月携わってきたことは紛れもない事実です)そこから、安西さん、青山さん、藤澤さん、りっきー、よしPをはじめとしたかなり大勢のスタッフを社内外からかき集め、1つのチームとして形にするまでが一番大変だったかもしれません。もちろん、苦労話は他にも沢山あるんですが、それはまた別の機会に…。
と、前置きが長くなりましたが、
「DQ夏祭り2018WEST」をご覧頂けなかった方もいらっしゃるはずなので、結論から言うと青山さんにプロデューサーをバトンタッチすることにしました。
この件に関しては、実は結構長い期間をかけて調整していまして、交代そのものは一昨年の夏祭りくらいから考えていて、青山さんにはその翌年すぐくらいに相談しました。期末評価というやつのタイミングですね。ちょうど今から一年半くらい前です。
青山さんの思いに関してはまた後で語って頂きますが、わたしが選択できる中でのベストな人選であると考えています。なかなか仕事でベストを選択できることって少ないので、毎度ベターな選択をしつつ、時間を使ってベストな結果に引き上げることが多いのですが、今回に関しては本気でベストな選択だと思ってますので、皆さんご安心を!
(だって、青山さん、めっちゃ働き者なんですよ!)お伝えすべきことはここまでです。ここから先は普段皆さんとお話しているDQXプロデューサーとしての齊藤ではなく、会社の人間、組織の長としての齊藤の考えなので、そんなん関係ないやー!っていう人にはどうでも良い話かもしれません(笑)
ですが、ああ、こんなことも考えていたのねってことを知りたい人もいるとは思うので、折角なので書いておきますね。
そんな訳で、交代という考えに至るまでの思考についてですが、自分が30過ぎくらいの時に「上がつかえている感」が気になるようになりました。そこから、自分の部下や開発の現場で頑張っているスタッフたちのキャリアパスを強くイメージするようになったと記憶しています。何人かには夏祭りや特番にも出演して貰っていますが、各セクションのリーダーも世代交代している訳で、プロデューサーだけそのままってのも都合の良い話だと常々考えていました。
当然のように直属の部下でもある青山さんのキャリアパスも考え、プロデューサーという職種へのコンバートを検討してみてはどうかという話をしていました。この話をした時点でDQXももうすぐ5年経つ頃で、課題が全く無いわけではないものの、まずは経験するという意味でもDQXでのプロデュース業務は良い環境だと思っていました。もちろん誰でも良いわけでは無く、開発・運営チームの過去を振り返り、また現在・未来をふまえ、青山さんこそが適任だと考えての人選です。専属でDQXだけ見られるという点だけであれば、すでに私よりも圧倒的に適任なはずです!!
しかしながらプロデューサーの仕事は多岐に渡って色々あり、いきなり社外渉外やプロモーションといった外向きの仕事をお願いするのも気が引けたので、開発ラインプロデューサー的な立ち位置で社内向け業務を担って貰うのはどうかという話をしましたが、青山さんにも熟考して貰った結果(半年くらいですかね)、「社内外の両面でプロデューサーとしての業務を任せて貰えるならばやりたい」という返事を貰えたので、それであれば是非!ということで、ここ数ヶ月は特に顔出しの仕事をして貰っているという経緯がありました。
(最初は戸惑いもあったと思いますが、もうすっかり慣れて貰ってるはず?です(笑)ああ、そうそう半年かけて全国を回った「よーすぴ散歩」は皆さんの顔を直接見ながらお礼を言いたかったという裏目標がありました。もっと沢山の都道府県に行きたかったんですが、さすがに休日返上でもあれが限界でした…。いつの日かまた是非…。
繰り返しますが、DQXをお仕事と考えれば当たり前ですが課題が無いわけではないので、齊藤がバージョン4の途中で放り出したと思う方がいても仕方ないと思います。これをご覧の皆さんからは随分と中途半端な時期に交代するように見えるかもしれませんが、実はすでに次のバージョンに必要なキャラクターデザインは鳥山さんに発注済みですし、そのために必要になるシナリオプロットも当然のように完成している状態なので、時期はいつでも中途半端なんですよね…。
また、プロジェクトの途中からプロデューサーに就任ってどうなのよという点に関しても、プロデューサーとして0から新作で当てるのはそんな簡単な話ではなく、プロデューサーとしての経験を積むにあたってDQXは青山さんにとって最適な環境だという判断で今回の決断に至っています。
齊藤個人としてもDQXほど安定して収支をみられるプロジェクトもそう多くはなく、当たるも八卦当たらぬも八卦なチャレンジプロジェクトよりも慣れ親しんだ環境に身を置いていた方がどれだけ楽かと考えたことが過去何度も何度もありました。ぶっちゃけますが(笑)
DQXは完全新作よりかは幾分安心できるという点で、良いプロジェクトだと思います。しかしながら、青山さんにとっては未知な世界への挑戦になります。
そんなわけで皆さんに齊藤からの最後のお願いを。
青山さんをはじめDQXチームにこれまで以上の応援を宜しくお願い致します。業界歴25年にもなると沢山の開発会社、開発チームを見てきました。そんな中でもDQXの開発チームは皆さんの応援に応えられる素晴らしいチームであると自信を持って言えます。
まだまだ話したりないですが、このくらいにしておきます。会社を辞めるわけではないですし(笑)
今まで以上にDQXの世界をのびのびと冒険できるじゃないか!と今からワクワクしています。
最後になりますが、本当に本当にありがとうございました!
プロデューサーというのは、全体の責任者です。その責任者の変更で何が変わるのかが気になるところだと思いますが、今までと変わりなく楽しんでいただけるようにしますので、ご安心ください。冒険者のみなさまと共に成長しているドラゴンクエストXを、今後も大切にしていきます。もちろん改善もしていきますので、今までどおり提案広場にご提案いただけますと助かります。
ゲーム内容についても、ディレクターの安西さんを中心とした体制に変更はありません。優秀なスタッフが揃っていますので、引き続き良いものを創っていけると確信しています。
今まで私が携わってきたテクニカルディレクター、すなわち技術責任者についてですが、新テクニカルディレクターは、旧リードプログラマーの西岡信賢にお願いしています。現時点で引き継ぎはほぼ完了していて、技術関連は既に西岡さんを中心とした体制になっています。そもそも初期から私が不在のときは西岡さんが代役を務めていましたので、こちらも安心していただいて大丈夫です。
さて、齊藤さんがかなりぶっちゃけているようなので、私も少し書きましょう。
実を言うと交代の話をもらった当時、私は西岡さんに次期テクニカルディレクターを引き受けてもらっていました。これは、組織活性化のためには自分が異動する必要があると考えていたからです。しかしそれは私がプロデューサーになっても達成できますし、私自身はドラゴンクエストXがゲームもスタッフも冒険者のみなさまも大好きですので、色々考えましたが私がプロデューサーになる話を引き受けさせてもらうことにしました。
組織はどこで切ってもそのトップの能力に従う、というのが私の持論です。そして、どの組織もトップは明確である必要があると考えています。齊藤さんからはプロデューサー業務の一部だけでもどうか、というお話をいただいていましたが、分担は責任の所在が曖昧になる危険があると考え、全責任を負う立場であれば引き受けましょう、という話をさせていただきました。それは全部できるという意味ではありません。できることは何でもしますし、責任は持ちますが、得意な人がいるなら任せます。
現時点では新しいことが多く、齊藤さんがすばらしいプロデューサーだったことを改めて認識していて、私自身がまったく不安を感じていないと言えば嘘になりますが、何をやるにも楽しむことで全力を出すというモットーでやってきているので、今回も楽しんで、そして全力を出していきたいと思います。冒険者のみなさまにも、引き続きドラゴンクエストXを楽しんでいただけましたら幸いです。そして最後になりましたが、齊藤さん、おつかれさまでした。今後も齊藤さんが生み出すであろう新しいゲームやコンテンツに期待しています!
(PS)
青山のアイコンをアート・ディレクターの中津さんに書いてもらいました。美化され過ぎですが似ていますよね!